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あの時、ランドオブリバティはなぜ“逸走”した? 「西船橋に飯を食いに」が的外れではない理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shimbun
posted2021/02/08 17:00
昨年12月のホープフルステークスで逸走したランドオブリバティ(右)。きさらぎ賞は3着に終わったものの、見事に修正し走り切った
雪辱戦のきさらぎ賞は単勝2.7倍の1番人気
きさらぎ賞での鞍上は、過去3戦と同じく三浦皇成。三浦は鹿戸厩舎の所属騎手でもある。2008年に武豊の新人最多勝記録を更新するなど華々しい活躍を見せながら、未だJRA・GI勝利のない三浦は、新馬戦、芙蓉ステークスと連勝したこの馬で臨んだホープフルステークスに期するものは大きかったはずだ。鹿戸調教師も、弟子に自厩舎の馬で大きなところを獲らせたいという気持ちは強かっただろう。
そんな師弟コンビの雪辱戦となるきさらぎ賞で、ランドオブリバティは単勝2.7倍の1番人気に支持された。
ゲートが開いた。ランドオブリバティは、スタート直後に両側から挟まれてしまい、正面スタンド前では最後方からの競馬となった。口を割って掛かり気味になった状態で、1コーナーへと入って行く。
向正面に入ったころには折り合い、先頭から10馬身ほど離れた後方2番手を進んだ。
抜群の手応えで3、4コーナーを回り、直線では外に進路を取った。さらに外にいた武豊のヨーホーレイクのほうに一瞬近づきそうになったが、三浦が右ステッキで修正。そこからは、外に膨れることも内に刺さることもなく走ったが、爆発的な末脚を繰り出すこともなく、勝ったラーゴムから首+3馬身半差の3着に終わった。
先行したラーゴムが勝った流れのなか、序盤で後退する不利がこたえた。それでも、鹿戸調教師が「まじめに走ってくれました」と言ったように、他馬に迷惑をかけずに走り切ったのだから、合格点だったと言えよう。
「あいつら、西船橋に飯を食いに行こうとしやがった」
そもそも、なぜランドオブリバティは、ホープフルステークスで逸走したのか。馬に聞いてみないと本当のところはわからないが、いくつかの推測は可能だ。
ずいぶん前のことになるが、ランドオブリバティと同じように中山の4コーナーで逸走した管理馬と騎手のことを、調教師がこう言って怒っていたことがある。
「あいつら、西船橋に飯を食いに行こうとしやがった」
正確に言うと、西船橋の街は4コーナーの後方にあるので方向はちょっと違うのだが、その調教師の言葉は、実は真理に近いところを突いていたのかもしれない。