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田中将大、斎藤佑樹だけじゃない…15年後の「ハンカチ世代」を検証する<今季33歳になる“注目の5選手”>
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/02/09 18:00
06年国体でも決勝で対戦。試合後に握手する早実の斎藤佑樹(左)と駒大苫小牧の田中将大
(3)「中央大でパワーピッチャーに変身」佐野日大高・澤村拓一
ここからは、大学、社会人で素質開花の「ハンカチ世代」。文字通り、多士済々だ。
佐野日大高・澤村拓一投手(現・千葉ロッテ)の「当時」のことは、私もその名前しか知らない。本人によると、「体が細くて、球は速くてもノーコンで使えないピッチャーでしたね」と中央大4年の取材の時に笑っていたが、徹底したウェイトトレーニングによって20キロ近く増量し、150キロが当たり前の圧倒的パワーピッチャーに変身していた。
“超”のつく剛球だった。投げたボールが、捕球寸前には「ソフトボール」ぐらいにズームアップして見えたのも懐かしい。寒い日に、薄暗い室内練習場での全力投球。マウンド上の逞しいユニフォーム姿から、もうもうと湯気を上げながら投げてくれた。
メジャー挑戦も視野に入れつつ、いまだ「無所属」の今季スタート。今年で33歳。それでも、この剛腕、まだ10年ぐらい平気で投げてしまいそうな「余力」を感じている。
(4)「僕なんて、無名の高校で……」滑川高・石川歩
高校、大学時代をひっそりと過ごしながら、社会人の3年間で別人のような変身を遂げた「ハンカチ世代」なら、千葉ロッテのエース・石川歩投手だろう。
富山・滑川高、中部大学で目立った実績は挙げていないが、それでも大学4年生の春先、横なぐりのみぞれの中で受けた石川投手のボールには、将来の飛躍の片鱗どころか、どうしてこんなにいいボールを投げる投手が表舞台に打って出られないのか…不思議で仕方なかった。
あんまり寒いので、大丈夫?と気遣ったら、
「高校の頃は、吹雪の中でも投げてましたから……」
静かにそう言って投げてくれた右打者のふところをえぐるシュート。140キロ台で真っすぐに来て、最後にキュッと中に食い込む“本物”だった。
そんなすごい球を持っていながら、
「僕なんて、無名の高校で、富山でも勝ってないし……『斎藤世代』なんて、おこがましいだけで……」
青白い顔で、伏し目がちに、気の弱いことばっかり言ってたのが、社会人・東京ガスで一気に開花したから驚いた。