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東京五輪への厳しい世論は変わるのか? 為末大と考えた「五輪を目指すなとまで言われたら…ちょっと怖いですよね」
posted2021/02/07 11:02
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
AFLO
共同通信が1月上旬に行った電話による世論調査では、「中止すべきだ」と「再延期すべきだ」を合わせた今夏の東京オリンピック開催に否定的な意見は8割に上ったという。新型コロナウイルスの第3波によって、人々のオリンピックに対する眼差しは再び冷めたものになりつつある。組織委員会トップ・森喜朗会長の舌禍事件もこの状況を悪化させた。
為末大との対話も、開催の是非に加え、オリンピックと日本のスポーツ界のありようにまで広がっていった。(全2回の1回目/#1へ)
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「五輪を目指すなとまで言われたら…ちょっと怖いですよね」
――これだけ厳しい見方がどうしたら追い風に変わるんでしょうか。社会の状況次第とはいえ、スポーツ界やオリンピック委員会側から社会への働きかけも必要ではないかと感じます。例えば、新国立競技場をワクチン接種の会場として活用するというような。
為末 人それぞれオリンピック開催のリスクの捉え方は全然違うと思います。こういうのは両論になりにくく、どちらかに振れやすい。特にオリンピックは浮動票が多い印象があります。彼らはオリンピックがきて嬉しいと言っていた人であり、コロナだからオリンピックをやってる場合じゃないと言う人でもある。
感覚的には4、5割がシーソーのような感じで揺れていて、たとえば五輪大国のアメリカが「開催するぞ」となったら、途端に楽観論が出てきて空気が変わるような気もします。
――今は選手側にも東京オリンピックについて語るのが憚られるような雰囲気があるだろうと思います。
為末 そうですね。それでも、選手が「オリンピックを開催してほしい」「一生懸命練習をやっています」「開催されたら頑張ります」というところまでは全面的に受け入れられていいことだと思っています。
一個人が何かできるような権力を握っているなら別ですが、選手には練習しかできることはありません。「一生懸命仕事を頑張ります」と言っているのと同じなんです。
オリンピックをやるべきかどうかという話と、オリンピックを目指して頑張っている人がいるというのは切り分けて考えるべきで、オリンピックを目指すなとまで言われたら……それを自分たちの職業に置き換えてみたらちょっと怖いですよね。
「みんな、本当は私たちをいらないと思ってたのね」
――確かにそこが一緒くたになっている印象もあります。