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東京五輪への厳しい世論は変わるのか? 為末大と考えた「五輪を目指すなとまで言われたら…ちょっと怖いですよね」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2021/02/07 11:02
00年シドニー五輪、400mハードルで転倒した為末。パナマ代表の選手に慰められた ©AFLO
為末 僕はその主語を「アスリート」として考えてきたんですけど、アスリートが社会に貢献する以外にアスリートが尊敬される道はないんじゃないかと思っています。スポーツが社会にどれだけのものを提供できるかで、社会がどれだけ大事と思ってくれるかが変わる。我々はスポーツ界の環境改善とか、スポーツの課題という観点から離れて、社会の課題をスポーツでどうすれば解決できるのかに注力してやっていければいいのかなと。
スポーツはとても威力の強いコンテンツなので、瞬間の感動はいつだって強烈なものがあって、見れば感動します。だけど、長く続く意義とか意味のところが、日本のスポーツはまだ弱い。感動だけじゃない、具体的な社会の課題解決に役立つという側面がついてくると、もっともっとスポーツを取り巻く環境は変わってくるはずです。
――未曾有の危機を経て、来年の北京冬季大会や2024年のパリ大会以降、オリンピックは以前のような形に戻っていくんでしょうか。
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為末 とっても興味深い問いですよね。オリンピックを招致したら、こんなリスクがあるんだということがわかってしまった。そういう意味では夏季大会の開催地をパリ、ロサンゼルスと2大会同時に決めておいたのはIOCにとって好プレーでしたね。
ロサンゼルスがまた何か新しいモデルを開発するんじゃないですか。前回の1984年が商業五輪のスタートとなったように、今度はまた新しいビジネスモデルが出てくるかもしれない。これからはソーシャル五輪だとかね。
少なくとも競技数や参加人数など、こんなに規模が大きくていいのかという議論にはなっていくのだろうと思います。
(【前回を読む】「東京五輪“中止”論争、アスリートにどう影響?」「無観客五輪で一番失われるものは?」“3度出場”為末大に聞く へ)