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久保建英“異例の再レンタル”に思い出す、中田英寿のローマ残留 第一志望がマドリー復帰であるなら…
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byDaisuke Nakashima
posted2021/01/21 11:03
シーズン途中で再びレンタル移籍するという決断は生半可なものではないはず。それを決断した久保建英の未来はどうなるか
セリエAのペルージャで強烈なインパクトを残した彼を、当時ASローマの監督だったファビオ・カペッロは、「是が非でも君が必要だ」と言って口説き落とした。レストランでの会談の席で、テーブルをピッチに見立ててローマ加入後の起用法をレクチャーしたというのは有名な話だ。
しかし、新天地では満足な出場機会を得られなかった。同じトップ下のポジションに“ローマの王様”フランチェスコ・トッティがいたからだ。
そして、大型補強で選手層が厚くなった2年目の2000-01シーズンはさらに状況が悪化する。スタメン出場はわずか5試合にとどまり、外国人枠の関係でベンチ外となることも少なくなかった。
それでも、ヒデの心は折れなかった
それでも、彼の心は折れなかった。
虎視眈々とチャンスを窺い、終盤戦のユベントスとの大一番で、途中出場から伝説の1ゴール・1アシスト。ローマにスクデットをもたらした英雄は、シーズン終了後、自らの力でパルマへの移籍と背番号10を勝ち取ったのだ。
指揮官に望まれてステップアップ移籍をしながら、出番に恵まれなかったという点で、ビジャレアルでの久保と状況はよく似ている。
しかし、中田さんは耐え、久保は飛び出した。もし、あのまま留まっていれば、例えばELの重要なゲームで存在価値を示す機会もあったかもしれない。果たして久保は本当に、ビジャレアルでも「フットボールのプレーのために、できることはすべてやった」と胸を張れるだろうか。
エルチェとウエスカは下位に沈むクラブだ
大雪のため、練習なしで臨んだヘタフェでのデビュー戦で、2ゴールに絡む活躍を披露した久保。続くウエスカ戦では惜しい直接FKを放ち、チームも連勝を飾った。
しかし、相手が残留争いに巻き込まれているヘタフェよりもさらに下位に沈むエルチェとウエスカであり、しかもエルチェ戦は数的優位にある状況(エルチェは52分に退場者を出していた)での投入だったことを忘れてはならない。