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久保建英“異例の再レンタル”に思い出す、中田英寿のローマ残留 第一志望がマドリー復帰であるなら…
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byDaisuke Nakashima
posted2021/01/21 11:03
シーズン途中で再びレンタル移籍するという決断は生半可なものではないはず。それを決断した久保建英の未来はどうなるか
ラ・リーガで上位争いを演じ、ヨーロッパの舞台でも戦うビジャレアルから、昨季のマジョルカと同じく1部残留を目標とするヘタフェへの再レンタルは、語弊を恐れず言えば都落ちだ。ここから第一志望のマドリーにたどり着くには、ゴールに絡んだくらいで喜んではいられない。それこそ、有無を言わせぬ圧倒的な結果が必要だ。そうでなければ、近道を選んだつもりが、思わぬ遠回りになってしまいかねないだろう。
共通テストを終えた後、学校から届いた学年通信にこんなメッセージがあった。
「苦しいのはみんな一緒。どうかこの壁を乗り越えてください。そして将来、自分らしく生きていくためにも、安易に楽な道を選ばないように──」
生徒の伸びる力、可能性を信じているからこそ、先生たちはあえて強い言葉で背中を押す。久保も同じだ。前人未到の地に足を踏み入れられる特別な才能の持ち主だと知っているからこそ、彼には苦難と向き合うことを恐れないでほしいのだ。
それは、受験生の子どもに向ける親心に近いのかもしれない。だからもちろん、涼しい顔で満開の桜を咲かせ、この老婆心を笑い飛ばしてくれると信じてもいる。