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久保建英“異例の再レンタル”に思い出す、中田英寿のローマ残留 第一志望がマドリー復帰であるなら…
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byDaisuke Nakashima
posted2021/01/21 11:03
シーズン途中で再びレンタル移籍するという決断は生半可なものではないはず。それを決断した久保建英の未来はどうなるか
「干された」とまで言えるほど、まるでチャンスを与えられなかったわけでもない。ヨーロッパリーグ(EL)では5試合連続でスタメン起用されたし、ラ・リーガでの出番はたしかに限られたが、それでも先発出場は2試合あった。そこで目に見える結果を残せず、気持ちの焦りがプレーを粗くし、徐々にエメリの信頼が希釈されていったのだ。
ヘタフェとビジャレアル入団会見での言葉
ヘタフェへの入団会見で、久保は移籍理由をこう話している。
「僕はまだ若くて、出場時間と自分が選手であると感じられることを必要としています。環境を変えた理由はそれ以外にありません。人生で最も好きなことであるフットボールのプレーのために、足りないことはすべてやります」
だが、果たしてそれは、安易な妥協ではなかったか。昨年の夏、レアル・マドリーからビジャレアルへのレンタル移籍が決まった時も、彼はこう決意を口にしている。
「ビジャレアルを選んだのは、それが最高の選択肢だと思ったからです。これからはそれが正しかったと証明していかなければなりません。そのために、ディフェンダ―とゴールキーパー以外なら、どんなポジションでも喜んでプレーします」
19歳の若者の言葉尻をとらえて、揚げ足を取るつもりはない。けれど、わずか半年前のあの決意はどこに行ってしまったのかと、あまり例を見ないシーズン中の再レンタルには、疑問がぬぐい切れない。
第一志望が「マドリー復帰」であるならば
久保にとっての第一志望が「マドリーへの復帰」であるなら、個人的には少なくとも1シーズンはビジャレアルに留まるべきだったと思っている。監督との関係性も含め、難しい環境に身を置いてこそ、得られるものは必ずあるはずだからだ。
ピッチに立つ機会は限られても、例えばゴールゲッターとしてもチャンスメーカーとしても圧倒的な存在感を放つジェラール・モレノのような選手から、学ぶことは少なくなかっただろう。
「若い時の苦労は買ってでもしろ」などというのは、もはや古臭い考え方なのかもしれない。自らの進化のために、あるいは東京五輪や来年のカタールW杯を見据えた上で必要な選択だったと言われれば頷くしかないが、それでも熾烈なポジション争いを嫌い、楽な道へ逃げ込んだとの印象を消し去ることはできない。
そもそも「Bランク」のビジャレアルでレギュラーを取れない者が、「Aランク」のマドリーに必要とされるはずがないのだ。
思い起こす、中田英寿のケース
思い起こすのは、中田英寿さんのケースだ。