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右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ
posted2021/01/21 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Ryo Sato
彼からすれば奇跡でも何でもない。
とはいえ傍から見れば、これは奇跡というほかない。右目が見えないハンディキャップを乗り越えてニュージーランドの強豪への復帰を実現させたのだから。
2020年12月15日、オークランド・シティの公式サイトに「Matsumoto returns to Navy Blues」のタイトルで松本光平の復帰が発表された。
オセアニアで活動する31歳のサイドバックが不慮の事故に見舞われたのは2020年5月のこと。ニュージーランドのハミルトン・ワンダラーズに所属していた彼は、自宅の寮でトレーニングをした際にゴムチューブの留め具が外れて目に直撃。右目は見えなくなり、左目もおぼろげに見える程度まで視力を落とした。
「毎日、朝昼晩の3部練習をやっています」
プロフットボーラーとしての選手生命は終わったかに思われた。手術を経て、筋力も落ちて体重は12㎏も減った。まっすぐに歩くこともままならない。だが彼には違うものが見えていた。数カ月先にプレーしている姿を、疑うことなどなかった。この不慮の事故から立ち上がって、競技復帰するためのクラウドファンディングを始めたことで世間の注目も集まった。
7月末に話を聞いてから約半年。リモート画面に映る彼の体は明らかにゴツくなっていた。
「毎日、朝昼晩の3部練習をやっています。実戦を増やしたいので、1日2試合するときもある。この目の状態を抱えて、目に何も問題ない人と一緒にサッカーをやるなら、それくらいしないと真摯にサッカーに取り組んでいる人に失礼。僕自身、軽い気持ちでサッカーを続けたいと言っているわけじゃない。しっかりトレーニングしてプレーできるところを見せないといけないなという気持ちです」
オークランドは2月1日にカタールで開幕するクラブワールドカップ(CWC)への出場を決め、松本は開催地での合流を見据えて日本で調整を続けてきた。