酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
戦力段違いのソフトバンクに死角があるとすれば…エース千賀滉大の“酷使度”ぐらい?【記録で振り返り】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/20 17:03
レギュラーシーズン、ポストシーズンともに安定感抜群だった千賀滉大。2021年も消耗せず安定した投球を見せられるか
端的に言えば、パ・リーグの他球団とソフトバンクは「周回遅れ」くらいの差がついている。打撃も投手陣もリーグ屈指なうえに、2019年の周東、2020年の栗原のように次々と新しい戦力も登場している。2021年もソフトバンクはリーグ優勝、日本一の最右翼なのは間違いない。
しかし死角がないわけではない。最大の懸念事項はエース千賀滉大の「肩、肘」だろう。
3年連続2ケタ勝利を挙げている一方で
<ここ3年の千賀の成績、投球数と投手の酷使度を示すPAP(Pitch Abuse Point)>
2018年 22試合13勝7敗
141回 率3.51 2357球 PAP 93,764
2019年 26試合13勝8敗
180.1回 率2.79 3077球 PAP 385,727
2020年 18試合11勝6敗
121回 率2.16 2096球 PAP 281,511
PAPは(投球数-100)の3乗で導き出される。100球以下はカウントしない。MLBではPAPが10万を超すと黄信号、20万を超すといつ故障してもおかしくないとされる。
2年連続での“酷使度20万超え”は深刻
2019年の千賀は両リーグ最多の3077球を投げてPAPも38万を越した。2020年は試合数が減ったことで2096球しか投げていないが、PAPは28.1万。9月15日の日本ハム戦の148球をはじめ130球以上投げた試合が3、110球以上は12試合である。
投手の中には他の投手よりも強靭な肘、肩の持ち主がいるのは事実だが、客観的な数字として2年連続PAP20万超えは深刻だ。
選手層の厚いソフトバンクではあるが、エースが2021年もローテを維持するか――は大きなポイントになってくるだろう。
今季のソフトバンクはどんなチームとして開幕を迎えるか、興味は尽きない。