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戦力段違いのソフトバンクに死角があるとすれば…エース千賀滉大の“酷使度”ぐらい?【記録で振り返り】 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/01/20 17:03

戦力段違いのソフトバンクに死角があるとすれば…エース千賀滉大の“酷使度”ぐらい?【記録で振り返り】<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

レギュラーシーズン、ポストシーズンともに安定感抜群だった千賀滉大。2021年も消耗せず安定した投球を見せられるか

 月間22勝は1953年9月の巨人(21勝5敗)、1954年8月の中日(21勝4敗)、2002年8月の西武(21勝5敗)の21勝を上回るNPB記録。月間勝率.846は、1968年阪神の.905(19勝2敗)に次ぐ2位。月間勝越し18は、この年の阪神の17を抜いてこれまた史上1位。まさに歴史的な快進撃を演じたのだ。

 この月のソフトバンクをさらに詳しく見てみよう。

“ギータ頼み”にならない打線の凄まじさ

<2020年10月の主要打撃陣>
柳田悠岐 27試97打37安4本19点0盗 率.381
グラシアル 26試90打30安2本16点2盗 率.333
周東佑京 27試111打34安1本10点23盗 率.306
栗原陵矢 27試94打26安4本20点1盗 率.277
牧原大成 26試55打15安1本6点1盗 率.273
松田宣浩 27試96打26安5本17点0盗 率.271
中村晃 26試86打21安1本12点0盗 率.244
甲斐拓也 27試77打18安4本8点3盗 率.234
明石健志 14試30打11安0本8点1盗 率.367

 柳田を中心に強力打線だったことが分かるが、1人の打者がホームランを量産してチームを引っ張ったのではなく、上位から中軸、下位まで打線全体が機能して強力打線を形成していたことが分かる。チームの最多打点が柳田ではなく、その後ろを打つ栗原だったことが象徴的だ。

 そして周東。昨年、韋駄天で売り出した育成上がりの内野手だが、9月までは26盗塁で22盗塁の日本ハム西川遥輝と競り合っていたが、この月だけで23盗塁。盗塁死はわずか2、10月末には西川に10差をつけていた。盗塁成功率は驚異的な.920だった。

 さらにグラシアル。小指の故障のためキューバに帰国していたが、新型コロナ禍のために来日が遅れ、一軍の打席に立ったのは8月18日のロッテ戦だった。しかしそこから調子を上げて10月の月間打率は.333をマークした。

意外とモイネロが打たれていた以外は……

 次は同じく、10月の投手陣成績である。

<先発投手>
東浜巨 5試4勝0敗37.2回 率0.48
ムーア 5試3勝1敗33.2回 率2.67
石川柊太 5試4勝0敗31.1回 率2.59
千賀滉大 4試3勝1敗26.1回 率0.00
和田毅 4試3勝0敗20.1回 率2.66
笠谷俊介 3試2勝0敗13.1回 率0.68
大竹耕太郎1試1勝0敗5回 率1.80

<救援投手>
高橋礼 13試0勝0敗0SV 5HD 率1.69
森唯斗 11試0勝0敗8SV 1HD 率2.53
モイネロ 9試1勝2敗0SV 6HD 率4.15
嘉弥真新也 14試1勝0敗0SV 2HD 率3.52
泉圭輔 11試0勝0敗0SV 1HD 率1.86
松本裕樹 8試0勝0敗0SV 1HD 率2.84

 投手は大竹がローテの谷間で1試合投げた以外は、6人できっちり回した。完投、完封はないがほぼすべての試合で先発の責任を果たした。

 そして救援。意外なことに今季MVP級の活躍をしたセットアッパーのモイネロが10月24日の西武戦で3失点するなど2敗しているが、他の救援陣は破綻なく投げた。

 なお10、11月のパ・リーグMVPは打者は柳田悠岐だったが、投手は楽天の岸孝之だった。

【次ページ】 ポストシーズンも勢いは衰えず、巨人とは対照的

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