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【CL・Rマドリー戦は?】 “奇跡の地方クラブ” アタランタの岐路 反逆事件を起こした主将をスパッと切って… 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/01/19 06:00

【CL・Rマドリー戦は?】 “奇跡の地方クラブ” アタランタの岐路 反逆事件を起こした主将をスパッと切って…<Number Web> photograph by Getty Images

いざこざが起きたガスペリーニ監督率いるアタランタだが、ゴメスを戦力外としたことで再び結束なるか

 昨季までアタランタの貴重なリザーブプレーヤーだったベルギー代表MFティモチー・カスターニュ(現レスター)は昨夏の移籍後、アタランタ時代の苦い思いを吐露している。

「ガスペリーニとは対話が全然なかった。彼は戦術家としてはとてもすごい人だが、僕との間にはいい人間関係はなかった。たぶん、彼は選手の誰とも日々の会話をしたがる人ではないんだろう」

 今季も不動の中盤4人衆の1人、MFハンス・ハテブールはCLベスト8と2季連続セリエAで3位という輝かしい戦果をあげた昨シーズンが終わった途端、「ガスペリーニのサッカーはすごい。しかし、疲労度も半端ない。同じインテンシティで何年も続けていくのは無理なんじゃないか」と疑問を呈した。

下剋上のカタルシス後に残った“現実”

 5年前のガスペリーニ招聘以来、アタランタは激変した。

 セリエA残留だけが目標だった田舎クラブから、欧州列強を脅かす強豪チームへと、彼らは短い年月で驚くような急成長を遂げた。この数年間、ゴメスを初めとする選手たちは理想に燃え、下剋上のカタルシスに酔い、突っ走ってきた。

 クラブの金庫には、この3年の間に選手売却によって、2億ユーロを超える巨額が 振り込まれた。無名の若手を実戦で鍛え上げ、市場価値を何倍にも高める現指揮官の手腕あってこそで、彼こそアタランタにとって金の卵を生む魔法のニワトリに等しい。

 だが、クラブを取り巻いていた興奮は冷めつつあり、彼らは10年前には想像もしていなかった現実に向き合っている。

 常にゴールを狙う理想はなお熱い。ただし、ガスペリーニ体制が5年目を迎え、CLという最もハイレベルのコンペティションを2季続けて経験した選手は揺れている。

 例えば、アタランタの総年俸額は今季もリーグ11番目の4260万ユーロで、1位ユーベの5分の1にも及ばない。

 常にゴールを狙う攻撃サッカーの理想は崇高でも、もし経営陣が従来通り“収益の使い途は設備投資や育成部門の充実が最優先で選手への還元は後回し”路線を続けるようなら、現場の不満は溜まる。

 カスターニュのような鬱屈を溜め込んだり、ハテブールのように身も心も疲弊すれば、第2、第3のゴメスが現れないとも限らない。

守護神はゴメスに「残ってほしい」と

 アタランタを揺るがした「ゴメス反逆事件」は、主将の放出という形で幕引きを迎えようとしている。

 今や欧州でも一目置かれるようになったガスペリーニ監督は、毅然とした態度でチームの手綱を引き締めた。後任の主将は、指揮官曰く「年齢や忠誠度、出場歴を考慮して考える」そうで、DFラファエウ・トロイかMFレモ・フロイラー、MFマルテン・デローンのベテラン3人の中から選ばれるだろう。

 実は、ゴメスが最初にガスペリーニへ歯向かったとき、守護神ピエルルイジ・ゴッリーニは主将に非があることを知りつつ「残ってほしい」と訴えていた。

【次ページ】 会社組織として整備された列強クラブのように

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