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【CL・Rマドリー戦は?】 “奇跡の地方クラブ” アタランタの岐路 反逆事件を起こした主将をスパッと切って…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/01/19 06:00
いざこざが起きたガスペリーニ監督率いるアタランタだが、ゴメスを戦力外としたことで再び結束なるか
彼らは、ここ数年の大躍進でゴメスが決定的な役割を担ってきたことを十分理解している。プレーヤーとして昨季のリーグ最優秀MF表彰を受けただけでなく、ムードメーカーとしてもグラウンド内外でチームの中心にいた。それだけに主将の軽率極まりない裏切り行為がもたらした失望は大きかった。
続く第13節ローマ戦でも招集外となったゴメスは、練習場にアポ無しで訪れた民放TVの人気バラエティ番組の撮影班ともいざこざを起こしてしまう。
冬の移籍市場での放出リストに載せた
クラブ経営陣は当初、ゴメスとガスペリーニに対して和解の道を模索したが、関係修復が不可能だと悟ると、すぐにキャプテンの名を冬の移籍市場での放出リストに載せた。クリスマス前から移籍先はインテルかパリSGかと囁かれているが、いまだ具体的な交渉はない。
2年連続CL決勝トーナメント進出の快挙を成し遂げたガスペリーニは、もはやゴメスについて話をすることをやめている。会見で触れられても「語るべき選手は他にいるじゃないか」と作り笑顔ではぐらかし、2列目には若手MFマッテオ・ペッシーナを新たな主戦として積極起用している。
奇跡の地方クラブを文字通り牽引してきた主将と指揮官の2人は、どこですれちがってしまったのだろう。
王様のような自由を与えられてきたゴメスの不調
昨年の11月中旬、ゴメスは2022年カタールW杯南米予選を戦うアルゼンチン代表へ3年ぶりに呼ばれた。もちろん、アタランタでの活躍が評価されてのことだ。
だが、南米予選の長距離移動からクラブへ帰ってきたゴメスのパフォーマンスは惨憺たるものだった。リーグ一の破壊力を持つ攻撃陣は昇格組スペツィアとベローナ相手にまさかの2戦連続無得点、1分1敗で勝ち点を落とした。
2016年夏にガスペリーニが監督に就任して以来、ゴメスにはずっと“特権”が与えられてきた。ピッチ内の好きなところでボールを受け、好きなようにボールを運び、望む形でプレーを組み立てられる、王様のような自由を享受できる特権だ。