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【CL・Rマドリー戦は?】 “奇跡の地方クラブ” アタランタの岐路 反逆事件を起こした主将をスパッと切って…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/01/19 06:00
いざこざが起きたガスペリーニ監督率いるアタランタだが、ゴメスを戦力外としたことで再び結束なるか
指揮官はゴメスを“トゥットカンピスタ(=オールコート・フィルダー)”と位置づけ、周囲の戦術ポジション調整をしながら、あらゆる場面で自分が一枚噛まないと気が済まない主将の性格をポジティブに活かし、攻撃能力を最大限に引き出した。
桁違いの過密日程に指揮官が講じたプランB
過去のシーズン終盤の山場でも主将のキレが衰えなかったのは、監督が代表と縁遠かったゴメスを月に1度の代表ウィーク中にじっくり調整し、肉体のハイコンディション維持に留意させてきたからだ。
しかし、クラブのカレンダーには昨季からCLという心身の消耗が桁違いの大会が加わり、コロナ禍の影響で過密日程が当たり前になった。試合と齢は増えても、体力を回復させる時間はもうない。
これまでのように好きにプレーさせても利は薄いと判断したガスペリーニ監督は、今季序盤からゴメスを2トップの1枚にあて、プレー範囲をより運動量の少ないペナルティーエリア内に収めるよう指導してきた。CLのミッティラン戦での右サイドへの移動命令も、省エネを心がけながら相手の守備の穴を突かせることが念頭にあったためだ。
アルゼンチン代表に招集されて焦りが
だが今後も代表に呼ばれるために必要なのは昨季までのプレースタイルだと固執したゴメスは、指揮官のポジション変更指令を素直に聞き入れることができなかった。
今も昔も母国アルゼンチンは攻撃系選手の宝庫だ。リオネル・メッシ(バルセロナ)やセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・C)は別格としても、ラウタロ・マルティネス(インテル)やパウロ・ディバラ(ユベントス)といった代表入りを狙う同胞のライバルは世界中にわんさとおり、少ない代表FW枠を巡る競争は激しい。
長いキャリアを持つゴメスが初めて招集されたのは4年前、29歳のときだ。遅咲きのベテランだけに代表への執着心は余計強く、残り少ないキャリアに焦りは募る。代表歴は昨秋も含めて5回だけ、メジャー大会に出たことがないゴメスは、今夏のコパ・アメリカ2021に何が何でも出場したい。2月に33歳になるゴメスの思いは空回りしてしまった。
ガスペリーニ監督は本音で語り合える、良き理解者のはずだった。だが、彼は妻でも友人でもないことをゴメスは忘れていた。