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福島県“最強”の聖光学院で「野手歴代1、2を争う逸材」 それでも監督の本音は「高卒プロは早すぎる」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2021/01/12 17:00

福島県“最強”の聖光学院で「野手歴代1、2を争う逸材」 それでも監督の本音は「高卒プロは早すぎる」<Number Web> photograph by Genki Taguchi

聖光学院で1年生の秋からレギュラーに君臨する坂本寅泰

「うちの歴史はまだまだ浅いんだけど、野手では歴代で1、2を争うくらいの能力を秘めた選手だよね。基礎体力、打球を飛ばす、ボールを投げる、走ることに関しても有能なものは持っている」

「風呂場の鏡で自分の体を見ると…」

 走攻守で非凡な才能とポテンシャルを持つ坂本が、このオフ磨きをかけているのが最大の持ち味である打撃である。より強いスイングを実現させるべく、肉体の強化に重点を置いているのだという。

 食事の量を増やしているのもその一環だというが、練習ではウエートトレーニングに精力を注ぐ。意識を集中させるのは各部位の強化。スイングの際にボールを押し込む力が足りないと感じれば、始動時に瞬発力が求められる背筋を鍛える。前腕、上腕、肩、腹筋、大腿。必要に応じてベンチプレスやスクワットなど、筋肉を増量させるメニューをバランスよく行う。

「計画的にはやっていますけど、風呂場の鏡とかで自分の体を見ると変化がわかるので。最近は楽しんでやっています」

 そう言って、少し照れくさそうに笑う。「楽しむ」という表現は、打撃の向上を目論む坂本の原動力なのかもしれない。

名前を挙げた「2人のプロ野球選手」

 プロ野球選手なら、自分はどのタイプを目指すべきなのか? 想像を膨らませる。

 今なら、スイングの強さは楽天の浅村栄斗。タイミングの取り方はヤクルトの内川聖一を参考にしているのだという。

 彼らをイメージしてバットを振る。

 素振りのほかフリー打撃やティー打撃など、実際にボールを打つ練習も含め、最低でも1日500スイング。多ければ800から1000は振り込むのだという。

 バットを振り切る感覚を養え、近年では主流の練習のひとつであるロングティー打撃を、坂本はあまり実践しない。スイング力は前出のウエートなどで補えると感じている。何より、振ることだけを意識してしまえば、実際の打席で速いボールや鋭い変化球への対応が後手に回ってしまう恐れがある――そういった考えから、ロングティーの代わりに打撃投手のボールを打ち、感触を体に沁み込ませる。

「大阪桐蔭や日大三高でクリーンアップを打てるか?」

 全ては、目指すべき場所に到達するため。

「高校から、プロに行きたいです」

 短い言葉に、力がこもる。

「行きたいって言ってた? ちゃんと、真っすぐに答えたの? 坂本は」

【次ページ】 「もっと熱い男になんねぇと」

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