甲子園の風BACK NUMBER
【狙うセンバツ制覇】東海大菅生・若林監督が貫く“昭和な指導”「選手に好かれたいと思ったことは、一度もない」
posted2021/01/17 17:02
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph by
Shinichi Uehara
昨秋の東京都大会を制し、今春のセンバツ出場が確実視されている東海大菅生高校。2009年よりチームを率いる若林弘泰監督は、きっぱりとした口調でこう言う。
「僕は選手に好かれたいと思ったことは、一度もありません」
元号が平成から令和になり、スポーツの現場ではますます、時代に合った指導が求められている。いわゆる"昭和的な指導"には厳しい目が向けられている中、若林はぶれることなく、昔ながらの指導を貫く。
たとえばシートノック。両手に打撃用手袋をはめると、入念に滑り止めのスプレーを吹きかけ、猛ノックを放つ。エラーする選手がいればすかさず厳しい言葉が飛び交う。
「そういうのが試合に出るんだよ!」
繰り広げられるのは“ケンカノック”さながらの風景だ。今年55歳になるが、ノックをコーチに委ねることもない。若林は「選手はノックが一番嫌だと思いますよ」と笑う。
「優しい言葉」はかけない
選手を褒めることもめったにない。かける言葉も常に厳しい。
「優しい言葉をかけても子どもたちのためにはなりませんからね」
昨夏もそうだった。甲子園大会が中止になり、部員たちの大きな目標が失われたが、慰めは一切しなかった。各都道府県の代替・独自大会では指導者の恩情から、これが最後になる3年生主体で臨む学校が多かったが、若林は実力主義でメンバーを組んだ。
「コロナを、夏の甲子園がなくなったことを、選手も指導者も言い訳にしたらいけないと思ったんです。それに甲子園には紐付けされていなくても、代替大会があるのだから、そこで優勝を目指そうと。公式戦である以上、思い出作りの場ではありません。真剣に勝ちにいくのならと、例年通りに戦いました」