「これは、秋に負けた理由でもあると思うんですけど、やっぱり真剣さが足りなかったというか。自分も気づいているのに言えなかったり、チームとしても注意し合えなかったり。そういうところを、今からちゃんと直していかないといけないなって」

　そう、わかってはいるのだ。

　昨夏の経験も、坂本なりに胸に刻んでいる。

「ベンチ入りできなかった3年生も自分に賭けてくれていたことも感じましたし、その気持ちをありがたく受け止めて『3年生を負けさせたくない』って思いで戦いました。今のチームにしても、自分たちには夏しか残されていないので、負けて『こうすればよかった』とか後悔がないように、今から授業態度とか、日常生活から甘さを潰していかないといけないというか。そういうのはあります」

　監督の斎藤からは、まだ「プロに行かせる」というお墨付きはもらえていない。

　果たすべきは「今のまま」からの脱却。

「来年の春までに坂本が神格化されるまでの選手になれるかどうか」

　聖光学院史上随一の能力を秘めた男。監督は彼に、望みをすでに託している。

　プロへの扉をこじ開ける。カギは、その男――坂本自身の熱量だ。

　血潮をたぎらせ、本能を解放しろ。さすれば、魂は練度を磨いたバットに宿る。