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【箱根駅伝】大逆転の駒澤大・大八木監督はなぜ“4年生”を外したのか 「選ぶのは苦しいところがありました」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/03 20:10
10区を走った石川拓慎は、当日メンバーを外れた神戸主将と抱き合い喜びを噛み締めた
“優勝を目指そう”とは言わなかった
「往路を3位で終えて、優勝するにはまだ遠いのかなっていう思いがありました」
往路をトップと2分21秒差の3位で折り返すと、復路を走るメンバーには「3番を確保しよう」と指示を送った。6区で2位に浮上しても、各区間の選手には「2番を確保」と上方修正しただけで、“優勝を目指そう”と欲をかくことはなかった。9区を終えた時点では2位を覚悟していた。アンカーの石川拓慎(3年)には「区間賞狙いで、思い切っていきなさい」と言葉を送っていた。
初めて優勝を意識したのは、10区10km過ぎだったという。10kmから15kmの5kmでみるみる創価大との差は詰まっていき、15km過ぎで初めて、運営管理車から石川に「区間賞と優勝を狙っていこう」と檄を送った。
大八木監督の甲高い声は沿道の大きな声援の中でも選手の耳に届くが、観戦自粛が求められた今回、選手には例年以上に直接響き渡ったに違いない。20kmの声がけで、「男だろ!」の声が石川に届くと、「いい感じで切り替えることができた」と石川は、20.9kmでついに逆転した。残り2.1kmを残し、このレースで駒大が初めて先頭に立った瞬間だった。そして、石川は一気に創価大を突き放し、勝負は決着した。
今回の箱根駅伝は序章に過ぎない
「勝ったばかりで来年度のことを言うのもなんですけど、当然全日本は連覇したいですし、出雲駅伝も開催されれば勝ちたい。三大駅伝をとりにいきたいと思います」
学生駅伝界には末尾が“0”の年度に三冠校が誕生するという摩訶不思議な法則がある。今年度はまさにその法則に当てはまるシーズンだった。新型コロナウイルスの感染拡大により出雲駅伝が中止になり、思わぬ形でその法則は破られたが、全日本大学駅伝を6年ぶりに制した駒澤大が箱根駅伝でも頂点に立ち二冠を成し遂げた。そして、来季こそ三冠を狙いにいく。
思わぬ形で勝利を手にした今回の箱根駅伝は序章に過ぎない。平成の常勝軍団が、令和の時代にもいよいよ牙を剥く。