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【箱根駅伝】大逆転の駒澤大・大八木監督はなぜ“4年生”を外したのか 「選ぶのは苦しいところがありました」
posted2021/01/03 20:10
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Nanae Suzuki
「箱根駅伝の目標は総合3位以内」
伊勢路の王者に返り咲いても、駒澤大の大八木弘明監督はなかなか“総合優勝”という言葉を口にすることがなかった。
「優勝はできましたが、私たちのチームはまだ若いチームなので、3番以内に入れればいいのかなっていう思いはありました。チャレンジャーという気持ちで、今回、往路、復路に臨みました」
激戦を終えて大八木監督はこう胸の内を明かしたが、今回の箱根駅伝は来年度以降に再び黄金期を迎えるためのステップとして位置付けていたのだろう。もちろん指揮官の中に“優勝したい”という思いがなかったわけではなかったが……。
4年生を外し、下級生を使う采配は苦しかった
実際に箱根駅伝当日のオーダーを見ると、その印象はますます濃く感じる。1区に加藤淳、8区に伊東颯汰、10区に神戸駿介と実績のある4年生を12月29日の区間エントリーで登録しながら、いずれも当日に選手変更となった。出走した4年生は、3区の小林歩ただ一人だった。その一方で、1区・白鳥哲汰、5区・鈴木芽吹、7区・花尾恭輔と3人の1年生を起用。また、2年生と3年生も3人ずつという布陣だった。
「4年生も、一生懸命に下級生を引っ張ってくれていたんですけど、若い力を試してみたいという思いもあった。今回だけで終わりではないので。同じくらいの調子であれば、勢いのある下級生を使おうと思いました。温情で4年生を使ってあげたいっていう思いもありましたけど」
この采配は非情にも映るかもしれないが、指揮官にとっても苦渋の決断だったことには違いなかった。過去には、情を優先して4年生を起用して苦戦したケースもあっただけに、「本当にギリギリまで、12月30日ぐらいまで悩みました。選ぶのは苦しいところがありました」と言う。
結局は、その采配がずばりとハマったわけだ。勢いある若い力がチームを一気に頂点にまで押し上げた。
ただ、今回の優勝は名将にとっても“想定外”だったという。