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《下克上の箱根駅伝》四強でも古豪でもない…なぜ出場4回目・創価大が“ダークホース”になり得たのか?
posted2021/01/03 21:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Nanae Suzuki
まさか、まさかの結末だった。
創価大は往路優勝を果たし、総合優勝を目指して復路区間も快調に飛ばした。
7区に襷が渡った時点で2位の駒大に1分08秒差に迫られた。だが、7区の原富慶季(4年)が差を広げ、9区の石津佳晃(4年)が区間賞を獲る走りで、2位の駒大に3分19秒もの差をつけた。
勝負あり――。駒大の大八木弘明監督も「逆転は難しいなぁ」と感じたという。
だが、ここからドラマが始まった。
9回裏2死フルカウントから逆転満塁サヨナラホームラン
10区の小野寺勇樹(3年)は徐々にペースが落ちて、途中からキロ3分30秒のジョグのペースになった。逆に駒大の石川拓慎(3年)は絶好調とばかり軽い走りで前との差をつめていく。
田町では1分17秒差、御成門では47秒差、馬場先門では15秒差に縮まった。
そして、20.89キロ地点でついに石川が小野寺に追いついた。ちらっと一瞬、苦しみに歪んだ小野寺の表情を見て、そのままスパートをかけて差を広げていった。
創価大は4区からずっとトップを守りつづけ、誰もが優勝を信じて疑わなかった。そんな中、9回裏2死フルカウントから逆転満塁サヨナラホームランを食らった。テレビ画面には創価大の寮で戦況を見詰める選手たちの茫然とした表情が映し出されていた。
レース後、創価大の榎木和貴監督は淡々としていた。
逃がした魚はとてつもなく大きく、内心はきっと悔しい。けれど、結果を冷静に受け止め、感情的にならずに、指揮官らしい振る舞いを見せていたのが印象的だった。
最後、駒大の劇的優勝の盛り上げ役に回ってしまった創価大だが、全レースを通して実に見事な戦いぶりだったと言える。
近年稀に見る“大波乱”となった箱根駅伝。優勝候補の四強(青山学院大学・駒澤大学・東海大学・明治大学)をはじめ、スーパールーキーの活躍を期待された大学も数多くあった。そんななかで、どうして、「創価大学」に風が吹いたのだろうか?
“優勝経験者”が就任1年で「箱根出場」へ
榎木が創価大の監督に就任したのが2019年2月である。その頃の創価大は箱根予選会の常連校で、なかなか本大会に出場できなかった。自身も中央大学在籍時代には、4年連続で箱根駅伝を走り、いずれも区間賞を獲得。大学3年時には総合優勝を経験した。その難しさ、そして楽しさを肌で実感している榎木は、創価大からオファーを受けた。