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【高校サッカー史に残る伝説の選手宣誓】元青森山田主将・住永翔が4年前の“2分50秒”を振り返る
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/12/28 17:02
明治大では12番目のJリーグ内定者となった住永翔。高校生たちにメッセージを送った
「目の前の1試合、1試合を大切に戦う」
一発勝負の本番では2分50秒、噛むことも飛ばすこともなく、住永の言葉は冬の空にしっかりと響き渡った。
「今でも選手宣誓の内容は鮮明に覚えていて、特にパルティード・ア・パルティードの部分は、いい意味で今も変わっていないと思います」
明治大では「2冠を達成した青森山田のキャプテン」と「あの宣誓の選手」という2つの看板が常について回った。選手権の影響力の大きさを痛感する一方で、大学サッカーではなかなか芽が出なかった。
2年生になってようやくトップチームのメンバーに登録されたが、出番はほぼなし。3年になってもベンチで90分間を終えることもあれば、スタンドで応援する試合もあった。出番があっても連戦続きのターンオーバーでの出場。
「周囲からは『2冠のキャプテンなのになんで試合に出ていないの?』とか『高校時代がピークだったんじゃない?』なんて声も聞こえました。サッカーはチームスポーツと言っても、結局は個の力で登っていくことで成り立っているスポーツ。過去の栄光云々は一切関係ない。競争社会の中でポジションを勝ち取れないという事実は、自分自身の問題と受け止めていました。できることはそういう周りの言葉に惑わされずに、自分と向き合って1日1日を大切に積み上げることだけでした」
J内定を勝ち取る仲間たち
大学最後のシーズンになると、DF常本佳吾、GK早川友基(ともに鹿島アントラーズ内定)、DF蓮川壮大(FC東京内定)、DF佐藤瑶大(ガンバ大阪内定)、FW小柏剛(北海道コンサドーレ札幌)と、続々と仲間たちがJリーグ内定を勝ち取っていった。
「チームメイトだけでなく、選抜活動などで一緒にやっていた同期が次々と内定を勝ち取っていく中で、僕には何ひとつなかった」
関東大学リーグ1部が開幕した7月以降は、昨季は住永と同じ控えの立場だったFW佐藤凌我、MF持井響太(ともに東京ヴェルディ内定)、キャプテンDF須貝英大(ヴァンフォーレ甲府内定)らの内定も決まっていく。
「悲愴感を出したくなかったし、不安を表に出したくなかった。ベンチスタートであっても、出場したら全力を尽くすだけ。練習では次の試合に出るために集中してプレーするだけ。でも内心はめちゃくちゃ悔しかったし、何もないまま9月になった時は『もうプロは無理なんじゃないか』、『そろそろ別の道を考えた方がいいんじゃないか』という想いも芽生え始めていました。でも、やっぱりプロになりたいという気持ちは捨てきれなかったんです」