欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
誰もが「え?」のファブレ解任 ドルトムント愛に満ちたテルジッチは“クロップの幻影”を払拭できるか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/12/23 17:00
突然のファブレ解任劇の後、ドルトムントの指導を任されたテルジッチはどんな采配を振るうのか
CLグループリーグでラツィオに1-3で敗れて以降の公式戦7試合で6勝。うち5試合が無失点試合という上々の立ち上がり。負けたのはバイエルンとの首位決戦で、内容的にも結果的にも悲観するものではなかった。CLでは決勝トーナメント進出も決めた。
そんなチームが、11月28日の第9節で18試合連続未勝利中だったケルンに負けた。
ニアポストで後ろにそらしてファーポストで詰めるというシンプルなバリエーションを2発食らって敗戦。もちろん痛い一敗だが、いくらでも取り返しのきく段階ではあった。ところが、そこから歯車が狂いだす。
確かに、エースのノルウェー代表ハーランドが肉離れで6週間離脱となったのは痛い。ここまでリーグ10得点。単なる得点源にとどまらず、常に勝利を渇望し、どんな試合でも体を張って全力でプレーする彼のスピリットがチームにとってどれだけ重要だったか。
最後の試合ですべての悪い面が出た
彼の負傷離脱後はロイス、アザール、ブラントがセンターフォワードで起用されたが、機能しなかった。16歳のムココはいるが、ファブレは起用に慎重だった。
若い逸材がいきなり注目の的にされることで、必要以上のプレッシャーを感じることを避けたかったのだろう。その気持ちはわかる。
どんなチームでも、エースの離脱でリズムが狂うことはある。だから今は我慢しながらプレーを続けて、辛抱強く勝ち点を積み重ねていこう。ファブレはそう考えていたのではないだろうか。間違った考えではない。しかし、若いチームは我慢できなかった。そしてシュツットガルト戦ですべての悪い面が出てしまったといったところだろうか。
今も残る、クロップのまばゆいオーラ
ファブレは「何かが足りない」という印象を払拭することができなかったとも言える。ドルトムントというクラブには、歴史を築いた名将のまばゆいオーラが今も残っている。関係者もファンも、常に黄金時代を思い出してしまうのかもしれない。
クロップとともにドイツサッカー界を席巻したあの時代を――。
ダイナミックで、ハイスピードで、力強くて、誰よりもアグレッシブで。不安や心配は一切なく、後ろ髪を引かれることもなく、破壊的で攻守に圧倒的に相手を追い込んでいくあのサッカーを。