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誰もが「え?」のファブレ解任 ドルトムント愛に満ちたテルジッチは“クロップの幻影”を払拭できるか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/12/23 17:00
突然のファブレ解任劇の後、ドルトムントの指導を任されたテルジッチはどんな采配を振るうのか
クロップ以降の監督は、みんなそうだった。トゥヘル(現パリSG)もボシュ(現レバークーゼン)も、クロップの残像を振り払うことができなかった。
かつてドルトムントをリーグ&CL優勝に導いたヒッツフェルト元監督は「ドルトムントが外からのプレッシャーに負けたことに驚いた。せめてシーズン終盤までは冷静さを保っていた方がよかった。正当な対処ではない」と批判的なコメントを出している。
ヒッツフェルトが語る補強と目標設定
ヒッツフェルトは続ける。
「若くて有能な選手を数多く抱え、彼らを育てながらリーグ優勝をも狙う感覚を持つことなどできない。クラブの戦略がそうならば、優勝は目標にはなりえない。バイエルンとは違って、ドルトムントはチーム内のベスト選手をこれまでも売却してきたではないか」
選手補強と目標設定は、方向が合致しなければ成果には結び付きにくい。
ヒッツフェルトの指摘どおり、ドルトムントは優勝を目指すような補強はしていない。クロップ時代を求めるならば、あの時のような陣容をそろえなければ、バイエルンに競り勝ち優勝することなど、いつまで経ってもできはしない。
いずれにしても時計の針は戻らない。首脳陣が緊急ブレーキを引くことを決断した以上、次の陣容で進んでいくしかない。
クラブ内部で高い評価を受けるテルジッチ
後任は、アシスタントコーチを務めていたテルジッチだ。2010~13年までスカウトと育成指導者としてドルトムントで働き、ベシクタシュとウェストハムを経由して2年前にドルトムント復帰。監督歴はないが、内部では非常に高い評価を受けている人物だ。
「テルジッチを2018年に取り戻したのは、こういう時のためでもあった。信頼している。バイエルンがフリック監督で蘇生したような青写真があっての起用ではない」
バッツケ代表取締役はそう説明している
。
「私は純粋なドルトムント製だ。この地域の出身で、子供の頃から熱心なドルトムントのファンだ」と公言するテルジッチは、これまでにはなかった、クラブに対する情熱を持ち合わせている監督だ。ツォルクSDは「テルジッチには我々が必要としているエモーションがある」と語っている。
そんな彼が漕ぎ出した船は、どのような航海を見せるのか。