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誰もが「え?」のファブレ解任 ドルトムント愛に満ちたテルジッチは“クロップの幻影”を払拭できるか
posted2020/12/23 17:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
ドルトムントの監督交代はドイツに激震を起こした。
12月12日、遠藤航がプレーする昇格組シュツットガルトに1-5で完敗したことを受け、クラブはファブレ監督の更迭を決断した。チーム内の不協和音は、修復不能のところまできていたのかもしれない。
シュツットガルト戦後にはキャプテンのロイスが「僕らはしっかり守ることができないチームだ」とばっさり。代表取締役ハンスヨアヒム・バッツケの「チャンピオンズリーグ出場権獲得というクラブの目標が危険になったと受け止めた」という言葉にも少なからず信憑性がある。
誰もが「え?」となるタイミングだった
「ファブレとでは優勝争いを勝ち抜くために、最後の一線を越えられないのでは?」という声は、識者やファンの間では少なからずあった。加えてファブレは、ファンや首脳陣から絶大な信頼と人気を得ていた、というわけでもない。
これまでにも解任のタイミングはあった。だが、首脳陣は動かなかった。確信を持って迎え入れられる後継者がいなかったこともあるだろうが、それでもファブレの指導力への信頼はあったはずだ。
だからこそ、シュツットガルト相手の大敗後、ファブレに対する逆風がこれまで以上に強くなっても「早くても今季終了後に交代か」という見方が強かった。それだけに、一夜明けて解任の速報が飛び込んできたときには誰もが「え?」と驚かされた。
若手を育て上げたファブレの功績
ファブレはドルトムントを優勝に導くことはできなかった。しかし、多くの若手を育て上げた功績はある。闘争心を前面に押し出すタイプの指揮官ではない。物静かで我慢強く、大きなことを口にはせず冷静に対処をするのが彼のスタイルだ。
野心的で感情的になりやすい若い選手にチャンスを与えながら、辛抱強く支え、成長を促しつつチームを作り上げるのは簡単ではない。そうした条件の中で、ファブレはうまくコントロールしながらチーム作りを進めていた。
選手たちには「今度こそ」の思いが強かったはずだ。陣容は整った。バイエルンと優勝を争えるだけのチームになってきた。ファブレ体制3年目の集大成になるはずの今季は、出足だって悪くはなかった。