炎の一筆入魂BACK NUMBER

カープ鈴木誠也が「12月いっぱいは何もしません」 球界屈指の“練習の虫”に何があったのか? 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph byKYODO

posted2020/12/23 17:05

カープ鈴木誠也が「12月いっぱいは何もしません」 球界屈指の“練習の虫”に何があったのか?<Number Web> photograph by KYODO

5年連続打率3割を達成した鈴木誠也。プロ9年目を迎える来シーズンは野手キャプテンとしてもチームを引っ張っていく

「何とも思っていない。3割は1つの目標ではあったのですが、最後の試合も出ていないし、調整したみたいな感じもあったので情けない。長打率(5割4分4厘)も今年はあまり良くなかった。OPS(出塁率+長打率=9割5分3厘)もそんなに高い数字ではなかった」

 鈴木誠也という打者を見てきた記者も正直、もっと高い成績を求めていた。誰よりも本人がそう感じていることは、契約更改の記者会見での表情が物語っていた。

コロナで調整のペース配分を崩した

 2020年シーズン、誤算はあった。

 新型コロナウイルス感染拡大によって、開幕日が二転三転した。調整のペース配分とともに、気持ちのコントロールが難しい。「開幕が遅れることでオフが短くなると思い、ずっとウエートばかりしていた」。鈴木は揺れる気持ちをウエートトレーニングにぶつけた。

 ただ、それが結果的に失敗だった。「シーズンが始まっても体が硬く、おかしな感じがあった」。7月上旬まで打率4割超の滑り出しも、開幕からずっと動きに違和感が拭えなかったという。

 だからこそ、今オフは新たなトレーニング方法を試す決断をした。強さだけでなく、しなやかさも追い求めている。新型コロナウイルスによる延期や変更などにも対応できる備えをしている。

レギュラーに定着して初めて「最下位争い」に

 また何より誤算だったのは、チームの低迷だった。開幕直後に下位に転落すると、上位浮上の兆しも見えないまま最下位争いに加わった。クライマックスシリーズ(以下CS)のないシーズン。夏頃には、チームは大きな目標を見定められなくなっていた。

 初めての経験だった。レギュラーに定着してから初めて優勝争いに加わることができなかった。一軍で出場機会を増やした15年も、4連覇を逃した19年も、最後までCS争いにはいた。

 勝てない状況が続くと、小さな歪みは次第に大きくなり、気づけば修正できない状態となっていた。選手も首脳陣も1つになり切れない。3連覇したチームとはまったく違う空気が漂っていた。

【次ページ】 「個を突き詰めるだけだとつまらないし、しんどい」

BACK 1 2 3 NEXT
#広島東洋カープ
#鈴木誠也

プロ野球の前後の記事

ページトップ