炎の一筆入魂BACK NUMBER

カープ鈴木誠也が「12月いっぱいは何もしません」 球界屈指の“練習の虫”に何があったのか? 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph byKYODO

posted2020/12/23 17:05

カープ鈴木誠也が「12月いっぱいは何もしません」 球界屈指の“練習の虫”に何があったのか?<Number Web> photograph by KYODO

5年連続打率3割を達成した鈴木誠也。プロ9年目を迎える来シーズンは野手キャプテンとしてもチームを引っ張っていく

 「ここぞの集中力が出ない」と懸念していた無観客試合で自らを奮い立たせながら戦ってきた鈴木だったが、変わらないチーム状況に心のバランスが崩れているようにみえるときもあった。そんな内面を感じさせる行動が時折みられたのは、鈴木の若さゆえだったかもしれないし、バットで引っ張ることしかできない自分への苛立ちからだったのかもしれない。

「個を突き詰めるだけだとつまらないし、しんどい」

 個人タイトルという目標があったという見方もできる。結果的に達成した5年連続3割も目標の1つだっただろう。ただ、シーズンを終えた鈴木は、かぶりを振ってこう言った。

「自分のためにやる野球は違う。正直、面白くない。シーズンが終わってから、いい成績が残っていることが一番。最初から自分の成績をここまで残したいというやり方は自分に合わない。そう思った。どういうことを求められているのか感じて、プレーしたい」

 選手が自分のためにプレーした結果チームのためになる、という考えもある。だが、鈴木は違う。

「個を突き詰めるだけだとつまらないし、しんどい。チームのために、という考えが結果的に自分の成長につながるんだと思う」

 チームのために自分があり、チームの勝利が唯一の喜びでもある。広島の歴代野手最高年俸となり、名実ともに広島の顔となった。来季からは野手キャプテンも務める。鈴木にとって、変化は進化への入口だ。

「今年の経験も、いい経験にしたい」

 誤算も反省も、思考や行動によってプラスに変えられれば、成長の推進力となる。

関連記事

BACK 1 2 3
広島東洋カープ
鈴木誠也

プロ野球の前後の記事

ページトップ