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コロナ禍で「東大医学部」のアメフト部は何をした?「最初で最後の戦いだ!」【偏差値最強】 

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齋藤裕(Number編集部)

齋藤裕(Number編集部)Yu Saitou

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photograph byYu Saito

posted2020/12/20 17:00

コロナ禍で「東大医学部」のアメフト部は何をした?「最初で最後の戦いだ!」【偏差値最強】<Number Web> photograph by Yu Saito

将来は整形外科医を考え、来年からは臨床の道に進む6年生の前村

「八木が今季の主将で良かったと思います」

 そうなると、感染症対策と競技実現との難しい舵取りが迫られた今シーズン、率いていたのは主将ということになる。谷口は主将の八木をこう評する。

「もともと運動能力が高く、リーダーシップがあって、強い意志を持って試合の実現までこぎ着けた。今季の主将で良かったと思います」

 八木はハドルでの檄からは想像できないような落ち着きはらった口ぶりで、入部から主将になるまでを振り返る。

「鉄門サークル(医学部生限定のサークル)の中では熱意が1、2を争うもので、部の一体感もあって、素晴らしいなと思って入りました。

 主将は4年の幹部代(計3人)で話し合いをして決めたのですが、自分たちの学年は誰か前に出るタイプがいるわけではなく、最終的に自分になりました。普段から部内で部員同士で話し合って決める伝統があり、幹部代でそれをまとめる学生主体の体制となっています」

御殿下グラウンドのすぐ隣には東大病院が

 八木の就任直後に訪れた新型コロナウイルスという見えない脅威。部も活動休止に追い込まれた。

「3月上旬、普段練習場として使っている東大敷地内の御殿下グラウンドや農学部グラウンドの利用が制限され、そのすぐあとには緊急事態宣言が出て再開の見込みも全く立たない状況になりました」

 昨年までは試合も行っていた御殿下グラウンド。すぐ隣には東大医学部附属病院(通称:東大病院)がある。4月1日からウイルス対策本部が設置され、重症・重篤感染者の受け入れ先になった。御殿下グラウンドは無人の状態が続いた。

 部員は自宅室内でできる筋トレなど個人練習に取り組んだ。今年、最終学年の6年生になった前村叶基も、就職活動と臨床実習を並行して行いながら、来たるべき日を意識しトレーニングを行った。

「就職活動があるので夏までは練習に参加しない予定でしたが、できることはやろうと。ポリタンクを買って、水を入れて自宅内で筋トレに使ったりしていましたね(笑)」

 谷口HCは前村を「もともと運動能力は高くなかったが、3年頃から徐々に良くなり、医科歯科リーグで一流のプレイヤーになった」と評する。前村もはにかみながら言う。

「中高は卓球部から帰宅部で、運動はほぼ何もしていませんでした(笑)。でもスコーピオンズで先輩たちが優しくしてくれて、ステーキをおごってもらったりもして、あたたかいチームだなと思って入部しました。

 実際やってみて、アメフトは本当に面白いスポーツだなと感じます。対戦相手とぶつかった瞬間にお互いに積み上げてきたものがわかるんですよ。ああ、こういう練習をやってきたんだな、って。

 自分たちが最大限の準備をして、なにかひとつの取り組みで、あるいは細かい要素が組み合わさって、勝てたらとても嬉しいんです」

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前村叶基
八木佑樹
東大アメフト部

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