第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

國學院大學は万全の「山」対策。帝京大学が「育成力」で越えたい総合4位の壁。 

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箱根駅伝2021取材チーム

箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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photograph byNanae Suzuki/Yuki Suenaga

posted2020/12/24 11:00

國學院大學は万全の「山」対策。帝京大学が「育成力」で越えたい総合4位の壁。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/Yuki Suenaga

前回、総合3位でフィニッシュした國學院大の10区・殿地(左)。前回2区の帝京大・星が流れを作れれば総合3位も見えてくる。

星を中心に4年生が意地を見せる

 チームのカギはやはり4年生が握る。特にエースの星は、名実ともにチームの大黒柱だ。

 高校時代はインターハイにも出場していないが、今や学生長距離界を代表する選手になった。11月の10000m記録挑戦競技会では28分20秒63の帝京大記録を樹立したが、記録よりも他校のエース格をも抑えて、組1着でフィニッシュしたことに大きな価値があった。

 箱根駅伝では、前々回は10区区間賞、前回は2区9位と、安定した成績を残している。今回も2区が濃厚だが、前回以上の走りを見せてくれるのは間違いない。小野寺、鳥飼、増田も主要区間を担うことになりそうだ。

 今回の箱根駅伝では、上記の4人に山根昂希を加えた5人の4年生がエントリーされたが、エントリーから外れた4年生でも谷村龍生や吉田律哉は、メンバー選考がかかった12月頭の合宿で最後までもがいた。

 また、その合宿にさえ参加できなかったメンバーでも、その間にあった記録会で、境勇樹、甘崎勝、日野原智也が5000mの自己新記録をマークし、意地を見せた。特に境は30秒近く自己記録を塗り替えた。

 中野監督は“世界一諦めの悪いチーム”を掲げているが、最上級生のそういった姿勢が、チームをいっそう盛り立てている。

星「往路から仕掛けていきたい」

 区間オーダーは、これまでは経験者だろうと、前回とは違う区間に配されることが多かったが、今回ばかりは前回の区間配置がベースになりそうだ。1区・小野寺と2区・星で好位置に付けて、3区の遠藤大地(3年)で一気に勢いづけば、上位争いに加わることも可能だ。遠藤は秋に不調だったが、箱根駅伝に向けてぐんぐん調子を上げてきている。

 中野采配の特徴のひとつに、4区を重要視している点がある。4区がまだ18.5kmと短かったときにも、他校がルーキーや距離に不安がある選手を起用する一方で、帝京大はエース格を配することが多かった。その理由を中野監督は「私も学生時代に走っていますから(笑)」と冗談めかしたが、今回も「直前の調整合宿で調子が良かった者を起用する」と話しており、ポイントの区間になる。鳥飼、増田、中村風馬(3年)、1年生の小野隆一朗あたりが、その候補に挙がってきそうだ。

 また、復路に往路と同等の戦力を並べられるのも帝京大の強みである。前回、前々回と復路順位は2年連続で3位と好成績を上げた。往路で多少出遅れても、復路でじわりじわりと順位を上げていくのが帝京大のスタイルだ。

 しかし、もしかしたら今回は、これまでとは違うレース運びを見せるかもしれない。11月下旬、主将の星は中野監督にこんな話を切り出したという。

「総合3位以内という目標に変わりはありませんが、往路から3位を狙っていきたい」

 つまりは、これまでのように復路で巻き返すのではなく、往路から攻勢を仕掛けていきたいということだ。それだけ自信があるのだろう。星の宣言には覚悟さえ感じられる。そんなレースが実現した時、帝京大は、また一段高いステージに上がっているだろう。

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