第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

初めてシード校として臨む東京国際大学の勢い。前回メンバーが8人残る明治大学の安定感。

posted2020/12/23 11:00

 
初めてシード校として臨む東京国際大学の勢い。前回メンバーが8人残る明治大学の安定感。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

全日本大学駅伝の2区で好走した東国大・丹所(左)と、明大のエース・小袖。箱根駅伝でも主要区間への配置が予想される。

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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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今回で97回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。新型コロナウイルス感染拡大の影響により異例のシーズンとなったが、2021年1月の箱根路では21チームが1年間の鍛錬の成果を競う。大混戦が予想されるなか、各チームの監督の戦略を紐解く。

東京国際大学

第96回箱根駅伝(前回大会):総合5位
4年連続、5回目

Head Coach of the TEAM:大志田秀次

前回の5位を超えるため、選手に考えさせる指導を。

文=田坂友暁

 過去最高順位を一気に10も上げ、総合5位で初のシード権を獲得した前回大会。東京国際大学は「5強」の争いになると言われていた前評判に風穴を開け、存在感を示した。

「初シードは本当にうれしい。自分たちで決めた目標をクリアした達成感は、必ず次につながりますから」と、2011年の創部から9季目で悲願のシード権獲得に、大志田秀次監督の顔も綻ぶ。ただ、9区を終えた時点で3位につけていただけに、悔しさもあった。「後輩たちが3位になるために、これから考えて練習をしていってくれたらと思っています」と期待をかけた。

 その矢先、新型コロナウイルス感染拡大を受けて出された緊急事態宣言によってチームが活動停止。宣言解除の5月末まで、完全に個人に任せた練習となる。6月に再度集合したところで、学内でタイムトライアルを行った。その結果は確かに精彩を欠いていた。「正直、もっと上位や優勝を狙うチームとして考えたら、寂しい内容でした」と大志田監督も肩を落とす。

 しかし、そこで選手たちは自分たちの立ち位置を確認。これでは、前回の5位を超える成績を残すことはできない。そう実感し、少しずつ練習に対する姿勢にも変化が見えた。

 11月の全日本大学駅伝では昨季よりも順位を落とす10位。2年連続シード権獲得は逃したものの、山谷昌也、丹所健、宗像聖、堀畑佳吾、そしてルカ・ムセンビら2年生たちが元気いっぱいに、箱根駅伝に期待を持たせる良い走りを見せた。4年生も苦しみはしたが、それでも大崩れはせず、しっかりとした脚作りがされていることを証明した。

「君たちは、もっとやれるんだ」

 だが、大志田監督の目は厳しい。

「終盤、どう我慢するかが課題でした。2区の時点で8位だったのは良かったんですが、課題の終盤で離されてしまいました。今のチーム状況が出た。そう感じています」

 箱根駅伝で2年連続シード権獲得を目指すのであれば、その前哨戦としては合格ラインだったかも知れない。でも、大志田監督が目指すのは上位を狙うチーム。そういう決意の下で新シーズンをスタートしたはず。そういう思いがあったからこそ、厳しい言葉が口をついた。

「君たちは、もっとやれるんだ」

 大志田監督の思いが伝わってくるようだった。

 2011年、大志田監督が就任してから、常に口にしている言葉がある。

「自分が何をしたいのか、何を目指したいのか、そのために何をしなければならないのか。それを自分たちで考えて、自分たちで行動しなさい」

 一貫して、自分で考えて行動することを選手たちに課してきた。それはただ走ることだけを考えて言っているのではない。その先にある、選手たちの人生まで考えた言葉なのだ。

「選手たちは引退した後の人生のほうが長い。だから、ただ走るのが速いだけではなく、ここで学んだことを今後の人生に生かしてほしい。社会人になったら、自分で考え、自分で行動し、結果を出さなければなりません。その考え方を、陸上競技を通して学んでほしい」

【次ページ】 「じっくり力をつけて成長してきた」

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