第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
國學院大學は万全の「山」対策。帝京大学が「育成力」で越えたい総合4位の壁。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byNanae Suzuki/Yuki Suenaga
posted2020/12/24 11:00
前回、総合3位でフィニッシュした國學院大の10区・殿地(左)。前回2区の帝京大・星が流れを作れれば総合3位も見えてくる。
帝京大学
第96回箱根駅伝(前回大会):総合4位
14年連続、22回目
総合4位が3度。前回は3秒差で3位を逃した。
文=和田悟志
「今季の全日本大学駅伝でシード権を獲ったチーム(上位8校)で、箱根駅伝で優勝経験がないチームはどこか分かりますか? そう、帝京大学だけが優勝していないんですよ」
帝京大の中野孝行監督が、こんなことを口にしていた。
それは箱根駅伝の歴代優勝校に割って入ることができた選手たちを労う言葉であり、また、帝京大も箱根駅伝で勝つ資格はすでに得ているという自信の表れかもしれない。
帝京大には、箱根駅伝でどうしても越えられない壁がある。優勝はおろか、なかなかトップ3に食い込めずにいるのだ。前回までで箱根駅伝の出場回数は21回を数えるが、最高戦績は4位。それも3度もある。
前回は、最終盤まで3位争いを繰り広げながら、わずか3秒届かず、またしても4位だった。閉会式でカップとメダルを授与される3位・國學院大學の選手の姿を見て、帝京大の選手の中には悔しさが湧き起こった。その雪辱を果たすべく、今季は“3位以内”をチーム目標に掲げている。
帝京大は、前回の箱根駅伝を走ったメンバーが半数の5人も卒業した。しかも、その5人全員が卒業後も実業団で競技を続けるほどの実力者たちだ。当然彼らが卒業したのは大きな戦力ダウンだった。
だが、「うちは学年が上がるごとに、しっかり力を付けていくチームですから」と中野監督が言うように、主将の星岳や小野寺悠、鳥飼悠生ら下級生の頃から活躍していた4年生はさらに力を付けた。
また、全日本大学駅伝で駅伝デビューを果たした増田空(4年)や細谷翔馬(3年)ら、上級生になって駅伝で力を発揮し始めた選手たちもいる。
不思議なことに、昨季からの戦力ダウンをあまり感じさせないほど、秋になって戦力が充実してきた。それが“育成力”に定評のある帝京大というチームなのだ。
箱根の常連校に築き上げた指導
中野監督は2005年11月からチームの指揮を執っている。高校時代に全国区で鳴らした選手や駅伝強豪校出身の選手はほとんどいないが、箱根駅伝には今回で14年連続の出場となる。選手を叩き上げて、チームを箱根駅伝の常連校に築き上げた。
ただ、以前は「1から10までを指示する」指導で、予選落ちしていたチームの再建を図ってきたが、この3~4年は選手の自主性に任せる指導にシフトしてきた。
「それがポジティブな発想からであれば、彼らが“やりたい”と思ったことを、できる限りやらせてみたい」
3年前には、1か月間の練習スケジュールをまるまる、選手たちに考えさせたこともあった。箱根駅伝にも連続出場中だったが、もう一段高いステージに進むためには思い切った“改革”も必要だったのだろう。実際に、その年から箱根駅伝では9位、5位、4位とステップアップしており、徐々に上位争いにも加われるようになった。
全日本大学駅伝でも、以前はシード権にさえ届かずにいたが、2018年に5位に入り、初めてシード権を獲得して以降、3年連続で獲得中だ。今季は7位だったが、これまでのチーム記録を3分54秒も更新。優勝した駒澤大学とのタイム差も3分32秒と僅差だった。
「7年前は17分近い大差を付けられましたから……。底力が付いてきているのを感じました」
指揮官は、チームの成長に確かな手応えを感じている。