第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
総合優勝した10年前とどこか似ている早稲田大学。駒澤大学は田澤の力を引き出したい。
posted2020/12/22 11:00
text by
箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph by
Nanae Suzuki/Asami Enomoto
早稲田大学
第96回箱根駅伝(前回大会):総合7位
45年連続、90回目
スピードに対応すべく5000m、10000m強化で急上昇。
文=和田悟志
早稲田大学に勢いが出てきた。
今季は決して前評判が高いとは言えなかったが、全日本大学駅伝では6区の終盤まで先頭をひた走った。結局は5位でフィニッシュしたが、大きな見せ場は作った。その後、トラックの競技会で好記録が相次いだこともあり、早大の評価は急上昇中だ。
ちょうど10年前の2010-11年シーズンは、まさに早大の年だった。10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝、そして、1月の箱根駅伝と学生三大駅伝で全て頂点に立った。当時、渡辺康幸駅伝監督の名参謀としてコーチを務め、学生三大駅伝三冠の快挙に貢献したのが、現駅伝監督の相楽豊だった。
相楽監督は学生時代に箱根駅伝を2度走ったが、4年時は駅伝主将を務めながらも故障で出場が叶わなかった。その年、チームも15位に沈み、そこから早大は低迷期に入った。相楽監督は卒業後、地元・福島の高校で体育の非常勤講師をしていたが、シード権を落とした責任を重く感じ、正月には必ず後輩のサポートに駆けつけていた。
その後、渡辺監督の要請を受けて、2005年4月にコーチに就任。主に育成組の強化と山(箱根駅伝の5区、6区)対策を担うと、2007年1月の箱根駅伝(第83回大会)でさっそくシード権の奪還に成功した。そこから早大は上位争いに割って入るようになり、2011年(第87回大会)で13度目の頂点に立った。
そして、2015年からは駅伝監督として母校を率いている。
スピード強化を課題に
相楽が監督に就いてからも、近年の早大は、箱根駅伝で安定して上位に入っていた。前々回は13年ぶりにシード権を落としたが、前回7位に入り、1年でシード権を取り戻した。
だが、昨季の1年間を通してみると、大きな課題も残した。箱根駅伝予選会があったため、早い段階でハーフマラソン仕様に仕上げなければならないという事情があったにせよ、トラック、特に5000mで自己ベストをマークする選手があまりにも少な過ぎたのだ。主力組で5000mの記録を更新したのはふたりしかいなかった。
2020年の春先、相楽は昨季の全員の5000mの記録を表にして、選手に提示した。
「こんなにも自己記録を更新していなかったんだ……って分かって、ショックを受けていました。これではなかなか戦えない。駅伝も高速化しているので、スピードに対応することは必要だと思いました」
今季のトラックシーズンは、5000mに主軸を置き、“スピードを強化しよう”という意識を植え付けた。
2020年前半は、緊急事態宣言が出されると寮が解散になり、部員は帰省して各自練習になった。だが、春先に話し合った課題を全員で共有できていたからだろう、緊急事態宣言が明けてから秋にかけて、自校での競技会でほとんどの選手が5000m、10000mともに自己記録を更新した。
もちろん、これが箱根駅伝の距離でどう生きてくるかは、蓋を開けてみるまで分からないが、大きな課題は克服できたようだ。