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「1人で止めた方が早くね?」スーパー1年生・水町泰杜が苦しみながら学んだ“過去最強”の早稲田バレー
posted2020/12/19 11:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
胸に「鎮西」と書かれた黄色のユニフォームで高校最後の試合をした武蔵野の森総合スポーツプラザ。それから約1年が過ぎた今年の12月、今度は胸に「W」と刻まれたえんじ色のユニフォームを纏った水町泰杜(みずまち・たいと)がコートに戻ってきた。
バレーボールの天皇杯皇后杯ファイナルラウンド。初戦を不戦勝で勝ち上がった早稲田大は準々決勝でFC東京(V1)に1-3で敗れた。しかし、その試合でも水町の存在感を残した。
高校1年時の春高は、2枚エースの一翼を担って全国制覇。「とんでもないルーキーがいる」と周囲を驚かせたように、大学でも格上のVリーグチーム相手に臆することなくスパイクやバックアタックを打ち分けた。一方でジャンプサーブでサービスエースを取り、ガッツポーズをしながら笑顔でコートを走り回る姿には、1年生らしい初々しさも感じさせる。
「4年生が頼もしいから、思いっきりやるだけ。ほんとのペーペーです(笑)。早稲田に来て初めて違うバレー、楽しむバレーを知りました」
“過去最強”と謳われた今年の早稲田大学
天皇杯の前週に行われた全日本インカレで、早稲田大は4連覇を成し遂げた。特に今季は“過去最強の布陣”と謳われ、アンダーカテゴリー日本代表でもある主将・宮浦健人や村山豪、すでに日本代表候補選手にも選出されている大塚達宣ら、世代を代表する選手がズラリと顔を揃える。
技術力の高さに加え、中学や高校時代に全国制覇を成し遂げた経験もある。相手校からすれば「これだけ揃えば勝って当然」と思われがちだが、実は早稲田の強さの源は「個」ではない。中学、高校でも指導経験を持ち、ユニバーシアード男子日本代表も率いた松井泰二監督の指導で磨き上げられた組織力こそ、“過去最強”と言われる所以である。
世界のスタンダードをベースに練られた戦術は緻密で、対戦する多くの学生たちが「どこに打っても決まらない」と口を揃えるほど、ブロックとレシーブからなるシステムは鉄壁。なおかつそれを実践する高い技術を備えた「個」が揃い、圧倒的な攻撃力も加わるのだから、早稲田の壁を崩すのは確かに容易ではない。
だが、実はこの「システム」に苦しめられたのは相手だけでなく、水町も同様だった。