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女性アスリートの「卵子凍結」という選択 スノーボード竹内智香が賛否両論を覚悟して公表した理由 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/12/17 06:00

女性アスリートの「卵子凍結」という選択 スノーボード竹内智香が賛否両論を覚悟して公表した理由<Number Web> photograph by Asami Enomoto

今月で37歳、6度目のオリンピック出場となる2022年北京大会へ向けて再び歩み始めた竹内智香。その決断の背景には「卵子凍結」という選択があった

後悔の形が変わるかもしれない

「日本の女性アスリートは欧州と違ってSNSなどでもプライベートなことをあまり話せる風潮がないですし、実際、なかなか受け入れられません。1人の人間として認識されることが少ないのかなと私は感じています。それが日本人として生まれた現実であり、そう簡単には変えられないことなのかもしれません。

 ただ、そういった状況のなかで私の今回の選択を知ってもらうことで、捉え方が変わる選手もいると思ったんです。人それぞれの選択であって、もちろん強制するものでも推奨するものでもありませんが、決断の先にたとえ後悔があったとしても、その後悔の形がこれまでとは変わる人もいるんじゃないかなと思って」

“welcome back”

 大きな決断を下した彼女は、22年北京五輪出場に向けてすでに新たなスタートを切っている。

 12月12日、イタリア・コルティナダンペッツォで行われたスノーボード・パラレル大回転の今季初戦で2年9カ月ぶりにレースに復帰。8位に入賞したが、想像以上のブランクの大きさを痛感したという。レース前日には、「一瞬、なんで復帰したんだろうと後悔しかけるくらいだった」というほど大きな緊張感も感じた。

「現時点ではまだ確実に表彰台に上がる力はありません」

 そう悔しがり、まずはレース勘を取り戻すことにフォーカスするが、雪上にはそれ以上の充実感も待っていた。

「レースでは多くの選手たちに“welcome back”と声をかけていただき、会場のアナウンサーもcomebackを歓迎し、盛り上げてくれて。とてもうれしかったです」

 竹内も言うように、何を選択し、どんな人生を歩いて行くのか、それらは全て自分次第だ。生活環境や価値観など、考え方は十人十色。多様な生き方が肯定されるようになった今だからこそ、自分らしい生き方を主体的にデザインし、自分の進むべき方向性を見定めことが必要なのかもしれない。

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