オリンピックPRESSBACK NUMBER
女性アスリートの「卵子凍結」という選択 スノーボード竹内智香が賛否両論を覚悟して公表した理由
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2020/12/17 06:00
今月で37歳、6度目のオリンピック出場となる2022年北京大会へ向けて再び歩み始めた竹内智香。その決断の背景には「卵子凍結」という選択があった
「キャリア形成」と「出産」の両立
日本では不妊治療のイメージが強いかもしれないが、欧米では「ソーシャルエッグフリージング」と呼ばれていて、人生の選択肢を増やすための方法の1つとして若いうちに健康な卵子を凍結保存するケースも増えている。アメリカでは卵子凍結支援を福利厚生として導入した企業も登場している。
ただし、卵子凍結は将来の妊娠・出産を100%保証するものではない。それゆえ今後の自身の人生を正しくイメージし、後悔しないための選択をすることが大切になる。竹内もまた卵子凍結をきっかけに、自身の人生を見つめ直した。
「本当に欲しいのかどうかも含め、子どもを持つことについても考えました。自分自身がこの先の人生をどのように生きていきたいのかを考える良い機会になりました」
競技から一線を離れ、休養していたこの2年間。その間に「結婚は?」「子どもはどうするの?」と度々聞かれることがあった。もちろん、自身も妊娠や出産にリミットがあることを十分理解していた。卵子凍結や体外受精などについてオープンに話す欧州を拠点としていたこともあって、次第に卵子凍結を選択肢の1つとして考えるようになった。
メリットとデメリットを理解する
さらに09年の卵巣嚢腫の手術を担当した藤原敏博氏との再会も後押しした。
卵子凍結という可能性にかけたいという女性は近年増加傾向にある。水面下でニーズが広がりを見せているが、正しく認識することがその第一歩だ。
竹内の担当医師である藤原氏は言う。
「まずは卵子凍結を正しく理解し、納得してもらう必要があります。竹内さんに限らずですが、時間をかけてメリット、デメリットを説明し、一旦持ち帰って本当に施行するのかどうかじっくりと考えていただくことが重要です」
若いときに卵子を凍結保存しておくことで、加齢に伴う卵子の老化を防ぎ、将来の妊娠の可能性を残す。一方で、将来必ず妊娠が成立するという確実性がないことを始め、高齢出産によるリスクや合併症の生じる可能性、体への負担等のデメリットもある。
「基本的に(凍結された)卵子は何年経っても使用は可能です。そして凍結した卵子をとかして受精させて、胚を子宮に戻して妊娠ということになりますが、これにより十数年後に妊娠・出産することも、理論上可能です。ただ、卵子凍結は卵子だけにフォーカスされていますが、妊娠というイベントは年齢が上がればあがるほど、様々なリスクが生じることも理解しておかなければなりません」(藤原氏)