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タイソンにデラホーヤまで…“レジェンドボクサーたち”が復帰を目指す「お金だけじゃない」理由とは
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/12/06 17:02
11月28日、54歳になった元世界ヘビー級王者マイク・タイソンがエキシビションマッチで復帰した
公式試合のリングに戻ってきた選手もいる。45歳になった元世界スーパーウェルター、ミドル級王者セルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)は8月に復帰戦を行い、無名選手相手に7回KO勝ち。最近では“ゴールデンボーイ”のニックネームで親しまれた元6階級制覇王者オスカー・デラホーヤまでもが47歳にして復帰を宣言した。デラホーヤは2008年にマニー・パッキャオ(フィリピン)に敗れて引退以降、何度も再起の噂が立ち消えになってきただけに、今回も実現するかは定かではないが、少なくとも練習を積んでいるのは事実のようである。
次々とリングに舞い戻る元スーパースターたちに対して、通常、冷ややかな視線が多くなるものだ。なぜかといえば、復帰の理由が金銭面であることが多いから。現役時代の栄光が忘れられず、大金の魅力に惹かれてカムバックを望み、失敗するアスリートはボクサーに限らず枚挙にいとまがないのが現実である。
なぜ“レジェンドたち”は温かく迎え入れられるのか
しかし――。現在までに復帰したか、あるいはカムバックを考えているレジェンドたちのモチベーションは少々違う印象がある。チャベスとアルセはチャリティーマッチの売り上げをパンデミックの中で奮闘する医療関係者に寄付したと伝えられている。マルチネスに関しても、アメリカでのプロモーターだったルー・ディベラは「リング内外で成功を収めたマルチネスは金銭的には問題がない」と述べていた。
デラホーヤの再起には自前のプロモーション会社、ゴールデンボーイ・プロモーションズを活気づけるためという意図もあるように感じられるが、本人が経済的に厳しくなっているという話は聞かない。
そんな中で、彼らがリングを目指す理由はどこにあるのか。もちろんそれぞれ状況、事情は違うものの、新型コロナウイルスによるパンデミックが少なからずレジェンドたちの復帰のモチベーションに影響しているのは間違いないのだろう。
メキシコの英雄たちの例にとどまらず、困っている人々のためにお金を生み出したい、助けになりたいといった慈善活動的な動機はもちろんあるはずだ。また、自粛期間中に自分に向き合った上で、あるいはトレーニングに費やす時間が増えた結果として、リングに戻りたくなった元名選手もいるに違いない。真打ちのタイソンも例外ではなく、今回のエキジビション登場はお金のためではないことを繰り返し強調していた。
「人々を励ますためにこの試合をやったんだ。この年齢でも頑張っていて、体調も戻した。そこを見てほしかった」