村田諒太「王者の本棚」BACK NUMBER
『地上最強の男 世界ヘビー級チャンピオン列伝』社会背景を映し出していた、ボクシングの歴史を紐解く。
text by
村田諒太Ryota Murata
photograph bySports Graphic Number
posted2020/11/29 07:00
『地上最強の男 世界ヘビー級チャンピオン列伝』百田尚樹著 新潮社 1900円+税
世界ヘビー級チャンピオンの物語を通じて、ボクシングという競技が常に社会とともに、そして歴史とともにあることを教えてくれる一冊です。ボクシング人気がアメリカで根づき、それが長く続いてきた理由が理解できます。
人種差別が激しかった20世紀初頭のアメリカで登場したのがジャック・ジョンソンでした。当時、黒人ボクサーは世界タイトルに挑戦できず、「世界有色人種ヘビー級」という別枠のタイトルで戦わなければなりませんでした。命の危険を顧みずに異を唱えたのがジョンソン。黒人初の世界挑戦にこぎつけ、そしてチャンピオンになったのです。