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タイソンにデラホーヤまで…“レジェンドボクサーたち”が復帰を目指す「お金だけじゃない」理由とは

posted2020/12/06 17:02

 
タイソンにデラホーヤまで…“レジェンドボクサーたち”が復帰を目指す「お金だけじゃない」理由とは<Number Web> photograph by Getty Images

11月28日、54歳になった元世界ヘビー級王者マイク・タイソンがエキシビションマッチで復帰した

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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 マイク・タイソン復帰戦の前後、米国内の盛り上がりは随分と凄いものがあった。

 11月28日、54歳になった元世界ヘビー級王者がロサンジェルスのステイプルスセンターで51歳の元4階級制覇王者ロイ・ジョーンズ・ジュニアと対戦。もちろん正式試合ではなく、2分8ラウンドのエキジビションマッチである。それでも、他にも多くの競技が行われた土曜日の夜、米スポーツ界で最大の話題は間違いなくこの一戦だった。普段はボクシングに見向きもしないニューヨークタイムズまでが特集を組み、ソーシャルメディアもタイソンのニュースで持ちきりだった。

往年の武器だったボディ打ちとアッパーも……

「何年もの時が流れても、タイソン戦はやはり特別だ」

 ヤフースポーツの大ベテラン記者、ケビン・アイオリがそうツイートしていた通り、すべてはタイソンのカリスマ性ゆえだろう。現役時代同様、ガウンなし、漆黒のトランクスという懐かしのスタイルで登場したタイソンは、ゴングが鳴るとかつてのように頭を振って前に出た。往年の武器だったボディ打ちとアッパーで、ジョーンズを追い込んでいく。ラウンドが進んでもタイソンのスタミナは意外なほどに衰えず、クリンチで時間を稼ぐのは3歳も若いジョーンズの方だった。

 2人のレジェンドは8回をフルに戦い抜き、タイソン優勢に見えたが、WBCによってあてがわれた3人の特別ジャッジによる採点は三者三様のドロー。普段は微妙な判定が出ると騒ぎになるが、あくまでエキジビションのこの日はその必要もない。

「なんで誰も俺のことを心配してくれないんだ? 15年ぶりの戦いだったのに。(ジョーンズは)2年前まで現役だったのに、みんな彼の方を心配しているよ!」

 試合後のインタビュー時、テレビのアナウンサーがジョーンズの体調を懸念する質問をした際、タイソンはそんなふうに言葉を挟んで笑いを誘った。

 ユーモアと余裕たっぷりのやりとりからも、主役が誰であったかは明らか。タイソンの知名度を考えれば無観客での開催は残念ではあったが、全米のお茶の間は沸き返っただろう。かつての英雄が久々に主役に戻った異色のファイトは、何が起こるかわからないパンデミック下に相応しいイベントにすら思えたのだ。

元スーパースターたちの復帰ブーム

 ボクシング界では元スーパースターの復帰が軽いブームになっている感がある。メキシコの英雄フリオ・セサール・チャベス(58歳)は、同国人の元5階級制覇王者ホルヘ・アルセ(41歳)とチャリティーマッチシリーズを開催。2021年にはマルコ・アントニオ・バレラ(46歳)対エリック・モラレス(44歳)というかつてのメキシカン中量級ライバル同士が、似たような形で拳を交えると伝えられている。

【次ページ】 なぜ“レジェンドたち”は温かく迎え入れられるのか

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