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箱根駅伝ランナーが“厚底制限”で自己ベスト率低迷? 一方で大迫傑、相澤晃らが履く“高速スパイク”とは 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byYuki Suenaga

posted2020/12/03 11:04

箱根駅伝ランナーが“厚底制限”で自己ベスト率低迷?  一方で大迫傑、相澤晃らが履く“高速スパイク”とは<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

全日本大学駅伝のスタート直後、駆けだした数えきれないナイキのロゴマーク

“厚底騒動”で自己ベスト率が大幅低下?

 しかし、今年1月には“厚底騒動”を経て、ワールドアスレティックス(以下WA)は使用できるシューズに制限を課した。シューズの靴底は「40mm以下」となり、7月28日の新規則では、800m以上のトラック種目は靴底が「25mm以下」に改定されたのだ。なおWA新規則は12月1日からの適用で、11月30日までは大会主催者の判断に任せられた。

 そのため、11月末までのトラックレースは厚底を履いていた長距離選手が多かった。では、実際にナイキ厚底シューズの“アドバンテージ”はどれぐらいあるのだろうか。

 11月23日に行われた10000m記録挑戦競技会は大会主催者の関東学連がWA新規定を採用。出場者の靴底は「25mm以下」という条件で行われた。例年、箱根駅伝出場校が大挙して参戦しているが、シューズの影響がタイムにもろに表れていたように思う。

 前年の10000m記録挑戦競技会は出場選手の8割ほどがナイキ厚底シューズを着用していたと考えられるが、出走304人で自己ベスト(1万m初レースは含まない)は155人。自己ベスト率は50.9%で、29分を切った選手は30人いた。それが今年はというと、出走231人で自己ベストは48人。自己ベスト率は約20.8%と大幅に低下して、29分を切ったのも19人しかいなかった。なお日本人トップは星岳(帝京大)で28分20秒63だった。

 一方、10000m記録挑戦競技会と同じく3連休(21~23日)に行われた他の1万mレースでは厚底を履いた選手が好タイムを叩き出している。

 早大競技会は井川龍人(早大)が28分12秒13でトップを飾ると、宍倉健浩(早大)、手嶋杏丞(明大)、櫛田佳希(明大)、山口賢助(早大)が星のタイムを上回った。28分台は19人がマークしており、その全員がWA規則外シューズを着用していた。

 八王子ロングディスタンスでも菊地駿弥(城西大)の28分08秒25をはじめ、中西大翔(國學院大)、福田悠一(創価大)、三浦拓朗(中大)が星以上のタイムをマーク。菊地以外はWA規則外シューズを履いていた。

厚底を履いていないのに続出する好タイム

 だが、トラックの長距離種目で厚底シューズを履かずに好タイムを出す選手も続出している。男子5000mでは遠藤日向(住友電工)が日本歴代7位の13分18秒99、吉居大和(中大)がU20日本記録の13分28秒31、石田洸介(東農大二高)が高校記録の13分34秒74。女子5000mでも新谷仁美(積水化学)が日本歴代2位の14分55秒83、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が同3位の14分59秒37をマークしているのだ。

 まだ大きく騒がれていないが、上記の選手はいずれもナイキの中長距離用スパイクを着用していた。その“パワー”は相当凄いと評判になっている。

【次ページ】 スパイクは厚底の半分の重量

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