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箱根駅伝ランナーが“厚底制限”で自己ベスト率低迷? 一方で大迫傑、相澤晃らが履く“高速スパイク”とは
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byYuki Suenaga
posted2020/12/03 11:04
全日本大学駅伝のスタート直後、駆けだした数えきれないナイキのロゴマーク
スパイクは厚底の半分の重量
具体的なモデルをいうと、今年4月29日に発売された「エア ズーム ヴィクトリー」と「ズームエックス ドラゴンフライ」。ともに800mから1万mに向けた中長距離用のスパイクになる。
エア ズーム ヴィクトリーは厚底シューズの最新モデルであるエア ズーム アルファフライ ネクスト%から得た知見を存分に生かしたモデルだ。約80%のエネルギーリターンを誇るズームエックス フォームに、カーボンファイバープレート。ピンがついた前足部にはエアも搭載されている。ソールが薄くなった分、軽くなり、重量は26.5cmで130g。エア ズーム アルファフライ ネクスト%の半分ほどしかない。
ズームエックス ドラゴンフライにもズームエックス フォームが採用されている。エアはなく、プレートもカーボンファイバー製ではないが、何百人ものランナーのデータをもとに足の曲がり方と動きを考えたデザインになっている。こちらは26.5cm で約125g とさらに軽い。
三浦龍司、田澤廉のインカレで足元を見てみると
今季は世界のトラック長距離種目でも大きな変化があった。ジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)が8月に5000mの世界記録(ケネニサ・ベケレ12分37秒35→12分35秒36)を16年ぶりに塗り替えると、10月には1万mの世界記録(ケネニサ・ベケレ26分17秒53→26分11秒00)も15年ぶりに更新。女子5000mもレテセンベト・ギデイ(エチオピア)が14分06秒62の世界記録を樹立した。いずれもナイキの“高速スパイク”がもたらしたものだ。
学生日本一を決める9月の日本インカレでは吉居大和(中大)が5000mで、三浦龍司(順大)が3000m障害で1年生Vを達成。田澤廉(駒大)は1万mで日本人トップに輝いている。彼らの足元を飾っていたのもナイキのスパイクだった。
三浦はエア ズーム ヴィクトリーを着用しており、7月には男子3000m障害で日本歴代2位の8分19秒37(学生記録、U20日本記録)を打ち立てている。吉居と田澤は日本インカレではズームエックス ドラゴンフライを履いていた。
昨年まではズーム マトゥンボ3というスパイクを着用していた田澤は、「スパイクも進化していると思いますよ。1万mを走っても最後まで余裕度が持てる感じがしました。クッション性と反発力のどちらも良くなりましたね」と話している。吉居も「脚への衝撃が減り、全体的に走りやすくなりました。すごく反発をもらえるスパイクだと思います。ただどちらを履くか迷っています」と日本選手権ではエア ズーム ヴィクトリーで勝負することも考えているようだ。