Number ExBACK NUMBER
祖父は伝説の棋士、22歳藤沢里菜女流四冠が達成した女性初の快挙とは【共用スリッパで帰るドジっ子だけど】
text by
内藤由起子Yukiko Naito
photograph byKYODO
posted2020/12/02 11:01
男女混合戦である第15回広島アルミ杯・若鯉戦で優勝した藤沢里菜女流四冠
祖父は伝説の棋士・藤沢秀行名誉棋聖
藤沢の祖父は伝説の棋士・藤沢秀行名誉棋聖だ。華麗な棋風で多くのタイトルを獲得し、今でも多くのファンがいる。盤外ではアルコール依存症、ギャンブル、借金、女性関係などの破天荒な人生は有名で、「最後の無頼派」と呼ばれていた。秀行は日本だけでなく中国や韓国の若手も鍛え、政財界にも支持者が多い。
訪ねてくる洪四段の友人のアマ強豪たちは、プロを目指す藤沢を優先的に鍛えたし、道場のお兄さんお姉さんたちにもかわいがってもらい、たくさん打ってもらえたという。
「里菜のおじいちゃんの光があったからでしょう。里菜はおじいちゃんに感謝しないといけないですね」(洪四段)
藤沢がプロになる前の10歳のとき、2009年に秀行は亡くなっており、師弟としての交流は短い時間だった。
弟子や棋士たちに「里菜をよろしくな」と頼んでいた
「9歳でまだ院生にもなっていないときに秀行合宿に行かせてもらいました。プロの先生がたが次々と秀行先生に碁を見てもらうのですが、秀行先生の厳しい指導で空気が重く怖かった。当時はもう秀行先生はだいぶ柔らかくなっていたというのですが」と藤沢。そんななか、「里菜ちゃん、寒くないか?」などと、藤沢には優しい言葉をかけてくれた。
「こんど対局しに家に来てね」と言って、住所を書いたメモを手渡してくれたが、秀行が体調を崩し家に行くことはできなかった。
病床で弟子や棋士たちに「里菜をよろしくな」と頼んでいたこと、「プロを目指して欲しい」と言っていたことは、亡くなったあとに藤沢は知った。
秀行の孫であるが、棋風は遺伝せずまったく似ていない。
藤沢も「秀行先生に怒られそうな棋風ですね。タイプ的には秀行先生のライバル、坂田栄男先生に近い」との自覚がある。