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「全集中」した藤井聡太二冠や将棋棋士って、どんな状態? 中村太地七段が挙げる“注目の仕草”とは
posted2020/11/22 17:02
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
Kyodo News
NumberWebでは将棋の“競技的”な側面を中心に、王座獲得経験のある中村太地七段に将棋の奥深さについて定期的に語ってもらっている。今回は将棋の「逆転」と「集中力」について、2回シリーズで語ってもらった(#1はこちら)。
『鬼滅の刃』ブームもあって「全集中」という言葉がよく使われていますね。将棋中継の際にも雑談の時間帯で『鬼滅の刃』の話題が出ることがあります。私も“柱”たちのような集中力を持っているように見える、ですか? いやいや、なかなかあのレベルまでは到達できません(笑)。
ただ、確かに棋士は集中する、考えるのが好き、1つの物事をやり続けることが好きという人が多いように感じます。
それは1局を通じての集中力に加えて、何十年も将棋をやり続けるわけですから、長いスパンでの集中力、継続力というのかもしれませんけど、1つのことを考えるのを止めてはいけないものだとも心に留めています。
集中力は、将棋を指すうえでは欠かせないものです。その集中はどのようにして生まれているのか。言葉にするのはなかなか難しいのですが、私の経験則で説明していければと。
手を読んでいるうちに“集中しちゃっている”
将棋は考える材料が多く、それを考慮しているうちに自然と集中状態に入っている感覚です。「よし、がんばって集中しよう」というよりは、「この手はどうなんだろう? いや、この手は……それとも……」と、手を読んでいるうちに“集中しちゃっている”と言いましょうか。
初心者の方ですと、何を考えたらいいかわからないから集中できない、そんなことがあるのかと思います。ただある程度強くなってくると、いろんな手が浮かんでくるうちにその集中状態が自然と身についてくるかと感じます。例えばですが、子供に向けた将棋教室をやっているとよくわかるんです。