フランス・フットボール通信BACK NUMBER
好調のフランス代表・デシャン監督に聞く「W杯チャンピオンはコロナ禍をどう乗り切っているのか?」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byPierre Lahalle/L’Équipe
posted2020/12/03 17:00
ロングインタビューに応じたディディエ・デシャン・フランス代表監督
またネーションズリーグやEUROでの対戦国の試合も見た。ギィ(・ステファン・アシスタントコーチ)とは定期的に話し合って意見を交換し、今後に向けてどう準備すればいいかを考えた。
私にはあなたがたが知らない情報や評価の基準がある。だからときに選択が奇異に映るかも知れないが、単に自分のやり方と論理に従っているだけのことだ」
――多くのフランス人選手が2つの欧州カップ決勝ラウンドを戦いました。ウセム・アウアーとダヨ・ウパメカノの代表入り(アウアーはコロナ陽性が判明し離脱)は、そこでの活躍が認められてのことでしょうか。
「しばらく前から彼らを観察してる。リーグはもちろんのこと、去年はEURO U-21本大会も視察した。だが、CLやELは試合が求める要求度が他とはまったく異なる。その舞台でマンチェスター・シティやアトレティコ・マドリー相手に素晴らしいパフォーマンスを披露したら考慮に入れざるを得ない。欧州カップで上位に進めば進むほど、選手個人にとってもフランス代表にとっても有益だ」
――昨年秋の代表戦も見返しましたか?
「自分の試合を見返すのはあまり好きじゃないんだ。いつもだいたい試合の直後に1度か多くとも2度見るだけだ。どこがうまくいってどこが駄目だったかをしっかりと記憶に刻み込んで、自信を取り戻すようにしている。
今は以下のように分析している。ここまで自分たちの力になったものを維持し続ける。例えばそれは連帯意識やメンタリティでありファイティングスピリットだ。そこにさらに別のものを加えて、プレーの連携やシステムを豊かにしていく。換言すれば、自分たちのパレットを少しだけ大きくする(註:できることの範囲を広げていくという意味)。W杯で起こったことのコピー&ペーストを繰り返しても、同じ結果には辿り着けないだろう。さらにいえば、自分たちの長所を維持しながら相手にはそれが見えにくい状況を作り出すことを目指している。ある試合ではうまく機能した組織が、別の試合でうまくいかないことはよくある。あるチームならそれで対応できても別のチームではそうではないことが」
「調整に終わりはない」
――チームが予測可能な姿をさらけ出すときもありますか?
「そう言っているわけじゃない。別の効率的なやり方を模索しながら、相手をより驚かせることができるということだ。だがいい。予測可能だと非難されるのは、うまくいっていないのに他ならないのだから」
――キーワードは『適応』でしょうか?
「それは明らかで、これほど複雑な状況で日程もとことんきつい今は、適応以上かもしれない。秋はどうなっていくことやら……。
先週の木曜に私は、発表の1時間前にコロナ陽性が判明したポール・ポグバに代えて、エドゥアルド・カマビンガを急遽招集した。今日ではプランBやプランCを準備するだけでは十分ではない。不測の事態に対処するためにはプランCやプランD、プランEも必要だ。ある試合の真実は次の試合には当てはまらないし、試合が求めるものも同じではない。あるシステムが機能しないから、試合がうまくいかなかったのではない。逆に機能すれば、それをさらに改善することができる。調整に終わりはない」
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#2 W杯優勝・フランス代表のデシャン監督が明かす「能力よりも重視している」“代表選考の条件”とは に続く