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ディエゴ・マラドーナ「神の子がくれた癒しと幸せ」~スーパースターの2つの顔~
posted2020/12/03 08:00
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph by
AFLO
母国アルゼンチンに栄光をもたらした天才フットボーラーの顔と、頂点を極めながら弱者の味方であり続けた、人情深き正直者の顔。神と人との狭間にあったスターの生涯が、私たちにもたらしたものとは。
サッカーを愛する人ならば皆、心の中に「自分にとってのマラドーナ」が宿っているだろう。そのマラドーナが天に召され、心の一部を引き裂かれた気持ちになっているのはきっと著者だけではあるまい。
訃報が入った直後から、テレビのニュース番組ではアルゼンチン国内のマラドーナ所縁のクラブに人々が花やキャンドル、ユニフォームや旗などを手に集結する様子が映されていた。
マラドーナが幼少期からファンだった最愛のボカ・ジュニオルス、プロデビューを果たしたアルヘンティノス・ジュニオルス、1年ほど前から監督を務めていたヒムナシア、わずかな在籍期間で永遠のサポーターを味方につけたニューウェルス・オールド・ボーイズ。ニューウェルスには、同じロサリオ市のライバルであるロサリオ・セントラルのファンまで足を運んでいたが、ロサリオを訪れたことのある人ならば、過激なほどの敵対心を抱くこの2チームのサポーターが心を通わせるその情景がいかに非現実的かがわかるだろう。
ほどなくしてアルゼンチン政府がマラドーナの棺を大統領府「カサ・ロサーダ」に安置し、翌朝から一般公開すると発表するや、今度は大統領府前の五月広場に人々が集まり始めた。マラドーナを見るためここに群集ができるのは、'86年W杯を制した代表選手たちがカサ・ロサーダのバルコニーから挨拶をした時以来のことだ。