フランス・フットボール通信BACK NUMBER
好調のフランス代表・デシャン監督に聞く「W杯チャンピオンはコロナ禍をどう乗り切っているのか?」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byPierre Lahalle/L’Équipe
posted2020/12/03 17:00
ロングインタビューに応じたディディエ・デシャン・フランス代表監督
「一日一日という感じで……、まさに手探りだった。選手は活動を再開できたが私はできなかった。厳しい状況に追い込まれ、恒久的な対応を迫られた。まず3月の2試合、ウクライナ戦とフィンランド戦が中止となり、次いでEUROが1年延期された。EUROに向けて準備してきたことがすべて水の泡となった。さらに9月に通常の活動再開ができるかどうかもわからなかった。すべてが異例で異常だった。これからの2試合、土曜のスウェーデン戦と火曜のクロアチア戦も無観客で、サッカー本来の姿とはいえない。だが、制約に従い、UEFAの厳格なプロトコルに則って試合をする以外に何ができる? ヨーロッパのすべての代表が同じ制約のもとで活動せざるを得ない」
――W杯とコロナ禍の狭間で、すべてが複雑になってしまいましたが。
「この2シーズンは私が望んだものとはまったく異なってしまった。世界チャンピオンでありながら、いい状態では決してなかった。去年はトルコに敗れ(0対2、2019年6月8日、EURO2020予選)、モルドバ戦(2対1、同11月14日、EURO2020予選)の前半も酷かった。だが、それは起こり得ることでもある。タイトル獲得後のリバウンドでないのは分かっているが、W杯のためにすべてを犠牲にして努力してきた。あるものはそれで虚脱状態に陥り、別のものたちは困難な時期を迎えた。大きな勝利の後ではよくあることだ。2~3カ月間のパフォーマンスが悪いからといって、われわれのクオリティが低下したわけではない。
選手が何をやったのか、これからさらに何ができるのかを基準に私は常に考えている。グループも――とりわけ30歳を超えた選手たちは、私のやり方をよくわかっている。オリビエ・ジルーを見ればいい。ある時期、彼はチェルシーでプレーの機会を失っていた。しかしプレミアリーグが終了すると、代表で毎試合得点しないからといって批判された」
――リーダーの1人であるアントワン・グリーズマンが難しい状況に陥っているのはどう見ていますか?
「何があろうとアントワンはアントワンだ。確かに昨季の彼はバルサであまりよくなかったが、代表での影響力を失うと考えたことは一度もない。要はどんなやり方とシステムを採用するかだ。彼はひとりだけで違いを作り出しているのではない。アトレティコはチームが彼のためにプレーした。だから心地よさを感じていたし、チームに占める比重もとても大きかった。
だが、1つの決断をしてアトレティコを去った。バルセロナでは事態はより複雑だ。2人でそのことは話し合ったし、これから先にバルサで起こることを私は無視するつもりだ。ただ、バルサですべてが悪かったわけでもない。いずれにせよ私に関しては明確で、私が彼にどんな役割を与えてどのゾーンでプレーさせるかを、彼もはっきりと理解している。どんなシステムであれ、ベストのポジションに彼を配置していることをよくわかっている。だから何も心配はしていない」
ウセム・アウアーとダヨ・ウパメカノの代表入り
――試合がなければ、代表監督は何の役にも立たないと感じましたか?
「そこまでは思わないが……、多少そう感じたときもあった。ただ、考える時間はたくさんあって、去年の分析をしてどうすればよかったのかをスタッフと話し合った。たくさん試合を見ることもできた。各国リーグの終盤から欧州カップまでの間は、毎日・毎時間を有効に活用できた。われわれの仕事の肝は、選手を観察してチェックすることだ。その対象が50人もいるのだから、時間はいくらあっても足りないだろう。