炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島カープにあの“熱血コーチ”が4年ぶりの復帰! 選手に求める「湧き出るパワー」と機動力
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2020/11/25 17:02
11月19日の会見で挨拶する河田雄祐・新ヘッドコーチ。「故郷」広島を低迷から救えるか注目が集まる
チームメートの前でベテラン選手に指摘するときも、陰では「みんなの前でも言うからな。いいな?」と事前に伝える配慮もする。ベテランにはベテランのプライドがあるからだ。
指導力に長けているだけではなく、一本筋が通った人間力に、選手はついてくる。
空振りした後のしぐさや守備の緩慢さ、手を抜くプレーなどを河田ヘッドは見過ごさないだろう。大きなズレは、小さなことから徐々に大きくなって生じるもの。河田ヘッドは小さなほころびも、ゆがみもすぐに正す実行力がある。
相手によって「勝てるスタイル」を変えられるように
西武、広島、ヤクルトでは外野守備走塁コーチとして、投球動作の分析、走塁技術指導、三塁コーチとしての状況判断などで、その手腕を発揮してきた。
「根拠のない盗塁は何も意味を成さない」。
メディアは数字を取り上げたがるが、盗塁数がすべて得点に直結するわけではない。相手にダメージを与えてこそ、攻撃となる。走らずに相手を揺さぶることもまた機動力。「機動力=盗塁」ではなく、盗塁はあくまでも機動力の一部に過ぎない。
「ほかにも動かし方がある。いろいろと手を打たないといけないところはあると思う」。
強攻策で得点を狙うだけの攻撃では限界がある。今季リーグ2位のチーム打率を残しても、接戦になると1点に泣いた。特に各球団の苦手な投手相手にはとことん打てなかった。「西(勇輝、阪神)に対して打つ(策)だけでは攻略できないことは今年立証されている。そこはバリエーションがないと勝てない」。ほかにも菅野智之(巨人)や大野雄大(中日)の名前を挙げながら、攻撃の幅の広がりを求めた。
盗塁と同じように、機動力の一部であるバントの精度向上もテーマに掲げる。「(天然芝の)マツダスタジアムを本拠地にしているならバントの確実性向上は欠かせない。相手にとって嫌なことはしていかないと」。主体的に攻撃を組み立てるだけでなく、対戦相手にとって何が嫌なのか。勝つスタイルだけを確立するのではなく、相手によって勝てるスタイルを変えられる準備をする。細かな野球の追求が、大きな力を生む。