炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島カープにあの“熱血コーチ”が4年ぶりの復帰! 選手に求める「湧き出るパワー」と機動力
posted2020/11/25 17:02
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
昭和を感じさせる男が広島に帰ってきた。河田雄祐がプロ野球人生をスタートさせた地、広島にヘッドコーチとして2017年以来4年ぶりに復帰することが決まったのだ。
第一声「ご無沙汰しています」と挨拶した会見から、熱い思いがあふれ出た。「機動力の精度向上」「打倒パ・リーグ」「常勝西武イズム注入」「スペシャリスト育成」「田中広輔再生」など次々にチーム再建プランも飛び出した。
広島野球で育ち、常勝西武で緻密な野球を血肉とした。機動力野球を熟知し、熱い情熱を持つ指導者には、赤いユニホームがよく似合う。
2020年の広島には、3連覇したときのような姿はなかった。シーズン開始早々に下位に落ちると、浮上することもできなかった。それどころか、チームから上昇ムードを感じることも、できなかった。チーム内からは「こんなに早く、こうも変わってしまうとは思わなかった」という嘆きも漏れ聞こえてきた。
河田氏も敵として、変化を敏感に感じ取っていた。
「元気というか、湧き出るパワーがちょっとなかったのかなと敵としては見ていた。試合をやっていく中で、一番そこが大事だと思うんですよ。結果うんぬんではなく、何とかしてやる、その気持ちがなければ相手に勝てないと思う」。
心技体の一番上にある「心」の重要性を2020年の広島から再確認した。
選手によって接し方を工夫する「河田流のコーチング」
25年ぶり優勝の16年、連覇した17年は、黒田博樹、新井貴浩という大きな柱がチームの雰囲気づくりに大きな役割を果たした。その裏で、チーム全体にピリッとした厳しさをもたらし、前を向かせるムードづくりをしていたのは河田外野守備走塁コーチ(当時)だった。
若手には厳しく、主力選手にはあまり指摘しない指導者もいる。だが、河田氏は若手であろうが、主力だろうが、ベテランであろうが、指摘することは指摘する。だからこそ、選手は素直に聞き入れられる。
一方で、選手には「大人扱いしないといけない」とリスペクトを持って接している。選手の性格やキャラクターを重んじて、強制するようなことはしない。「明るい子もいれば、そこまで明るくない子もいる。内に秘める子もいれば、表に出る子もいる」。選手個々と向き合い、選手によって接し方も変える。