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「全集中」した藤井聡太二冠や将棋棋士って、どんな状態? 中村太地七段が挙げる“注目の仕草”とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2020/11/22 17:02
王将戦挑戦者決定リーグで対局した藤井聡太二冠(左)と羽生善治九段。その集中ぶりだけでも“観る将”は楽しめるはずだ
集中して一手指すと、今度は手番が相手に渡るため「ゆだねる」状態となります。相手が指してくるまでは少し頭を休ませておきます。もちろん何手か候補手は考えておくのですが、実際に何を指してくるかはわからない。そこは思い付かない所もありますので、指してきてから本格的に思考しようとしています。
そして盤面で戦いが起き始め、終盤戦に向かっていくと、常に集中状態に入っていきます。相手が何を指してくるかわからない状態でも、全部の手に対して対応できるようにしておく。21時を過ぎて深夜の時間帯に入ると、お互いに持ち時間も少なくなってきて、自分の玉が詰むか詰まないか、相手玉に詰めろをかけるかを多角的に考えていく。
これはまさに「全集中」と言っていいでしょう。
食事も血糖値に気を付けながら
時間帯によって集中しやすい、しづらいかはあるか、ですか? ……実は先ほどお話しした、午後で局面が変わった場面ですが、昼食を済ませた直後のタイミングだったので、少し集中するには難しかったんです。
食べたものを消化するために身体が機能しますし、少し眠さを覚える時間帯があるのも事実です。その中で血糖値など急激に上下しないように食事メニューも調整しています。GI値というものも言及されていて、食べるものの順番、タイミングも若干気を付けています。
社会人の方もお昼ごろに10分くらい仮眠を取る、「パワーナップ」というものを会社全体で取り入れているところもあるとお聞きします。それができれば脳の効率が高まると思うんです。
実際に棋士でもそれを実践している人がいます。控室で横になって目をつむって……僕は仮眠するのは、もし寝過ごしたと思うと、さすがに怖いのでしませんが(笑)。今は対局中に電子機器を持ち込めないので、アラームをかけられないから、というのもありますね。とはいえ食事の買い出し係の人に「起こしてください」と頼むのも少し気が引けますし(笑)。