集中するには体力が必要で、体力が残っていなければ集中することができないと感じています。サッカーやラグビーでも試合終盤は肉体のパフォーマンスが落ちて、判断のミスが起きうるとも聞きますが、例えば渡辺明名人（棋王、王将と三冠）は常にランニングを怠らず、体重を一定に管理されています。

　長い時間の将棋でしっかり最後の場面まで集中しきる。そこは準備・訓練できる部分なので、それぞれが工夫している印象を受けます。

扇子をくるくると回しているときは……

　解説をしていると、終盤になればなるほど「ゾーンに入っているな」と思うことは、よくありますね。「おお、瞳孔が完全に開いている」というのは見ていてわかりますので（笑）。それこそ藤井（聡太）二冠は、集中すると出る“クセ”がありますよね。扇子をくるくる回したりするのは、無意識で思考のリズムを取るためなのかなと思います。

　今回ご説明した「全集中」の状態やちょっとした仕草も、さらに将棋を楽しんでもらえる要素なのでは――。ぜひ中継で注目してみてください。（構成／茂野聡士）

（前編『「豊島竜王と羽生九段の竜王戦で…」AI評価値の“逆転劇”とタイトル経験棋士が感じる“実際の差”』も関連記事よりぜひご覧ください）

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