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「全集中」した藤井聡太二冠や将棋棋士って、どんな状態? 中村太地七段が挙げる“注目の仕草”とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2020/11/22 17:02
王将戦挑戦者決定リーグで対局した藤井聡太二冠(左)と羽生善治九段。その集中ぶりだけでも“観る将”は楽しめるはずだ
集中力が極限まで高まった状態はスポーツでよく言われる「ゾーン」的な感覚なのだと思います。
棋士がどれだけ集中していたかが分かるひとコマとして注目していただきたいのは……一手指した棋士が記録係に「この手、何分考えていましたか?」と質問している、もしくは棋譜を見ている場面です。動画中継でよく見る場面かと思いますが、その際に棋士は「時間」を確認しているんですよね。
「40~50分考えたかな?」と思って実際は15分だと
それはどういうことか。
例えば対局でその手を「40~50分くらい考えちゃったかな?」という感覚で思っていて、実際に記録係に聞いてみると「15分でした」と想定以上に短かった。その場合は集中できている証拠で、凄く読みが深まっている状態になっていると自分で確認することができるんです。もちろんその逆もあって……自分の中では30分だったのが、1時間も考えていたのかというケースもあります。
つまり集中することで手が見えているのか、見えていないのか。自分の状態を確認するうえでも記録用紙などを確認しているんです。
全部の手がキレイに見えるのは年数回あるか
野球の「バッティング時、対戦相手が投げてきたボールが止まって見える」、ボクシングの「相手のパンチがスローモーションに見える」などがゾーンの一種かと思いますが、そういった部分では将棋も似た部分があるのかもしれませんね。
とはいえ、棋士も人間です。完璧なゾーン状態、全部の手がキレイに見えるような感覚になるのは……僕個人としては、年間に数局あるかどうかという。なかなかあることではないです。ただ、その状態にならなくとも対局を戦わなくてはいけない。なので先ほど申し上げましたが、序盤の研究をしっかりとして、うまく時間を使っていくかが重要になりますね。