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「全集中」した藤井聡太二冠や将棋棋士って、どんな状態? 中村太地七段が挙げる“注目の仕草”とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2020/11/22 17:02
王将戦挑戦者決定リーグで対局した藤井聡太二冠(左)と羽生善治九段。その集中ぶりだけでも“観る将”は楽しめるはずだ
集中していないときは教室の周りをワイワイ走り回っていたりするんですが(笑)、いざ対局が始まるとピシッと静かになって、自分の将棋を一生懸命考えながら将棋を指している印象を受けます。
才能がキラリと光る子になると、将棋が始まったとたんに目つきが変わって集中するところがあります。それは考える材料があって、自然と盤面に入り込んでいるのだろうなと感じることはあります。
長時間の対局になった場合、どんな集中を?
プロの対局になると1日掛かりでやるので、そこでの集中力の保ち方は……難しい部分もありながら、それぞれに考えるところではあると思います。集中力について棋士それぞれの感じ方があるかと思いますが、ずっと集中力が一番高い状態で続くことはありません。例えばですが……私の順位戦B級2組、佐々木慎七段との対局(※11月11日に行われ、中村七段の勝利)でご説明しましょう。
将棋好きの方ならご存じとは思いますが、順位戦は持ち時間が長いため、朝10時から夜中の12時くらいまで1日がかりの対局となります。そのため午前中というのは事前に準備してきた作戦で行けていれば……それこそ、いきなり“全集中”する必要はないといいますか(笑)。その作戦を改めて考えたりすればいいんですね。
新しく手を考えたりとかせず、割とのんびりと進みます。まさに先日の対局が事前に想定していたので、午前中はゆったりと時間が流れていきましたね。
少し集中の仕方が変わった時間帯は、午後に入ってでした。少し局面が変わったところがありまして、そこぐらいから一段階深く思考していく……具体的に表現すると、想定していた形との違いを検証する段階に入りました。
そういった意味で、序盤もまた重要なのです。そこで組み合い勝ちをできるかどうか――失敗してしまうと集中すべきチャンスが来ないまま負けてしまうケースもありますので。