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イチロー、松井秀喜、田中将大、大谷翔平……なぜ野球界に大スターは生まれにくくなったのか
posted2020/11/10 11:04
text by
橘木俊詔Toshiaki Tachibanaki
photograph by
Naoya Sanuki
※本稿は、橘木俊詔著『阪神VS巨人 「大阪」VS「東京」の代理戦争』(潮新書)の一部を、再編集したものです。
今後を予測すれば、巨人のファン数は多少減少するかもしれないが、日本のプロ野球において巨人と阪神のライバル関係は、今後においても重要な地位を占めるものと予測できる。とはいえ過去のようにセリーグの1位と2位を争うようなレベルの高い闘いの姿ではないかもしれないが、本章で強調したように、ライバルチーム間のダービー・マッチはプロスポーツにおいてとても重要な役割を演じるのである。
特に、大阪の経済的な地位が低下して、東京一極集中の進んでいる東京(関東)と大阪(関西)の関係において、巨人と阪神のライバル関係は両地域の代理戦争の象徴となっているからである。両チームのライバル関係を際立たせる方策はいかなるものがあるのか、いくつか提案しておこう。
「阪神vs巨人」には、大スターが必要である
第1に、両チームが強くなることがダービー・マッチの役割をさらに高めるし、人気度が上がることにつながることは間違いない。過去の両チームは巨人が阪神より強かったことは確実であるが、両チームとも1位と2位を争うほど強いチームであった。これが人気の重要な一要因でもあったので、再び両チームが強くなることに期待したい。特にセリーグがパリーグよりも弱いのが現代のプロ野球界なので、パリーグに追い付くためにも巨人と阪神に期待したい。
第2に、それ以上に重要なことは、過去の巨人対阪神戦は、沢村vs景浦、川上vs藤村、長嶋・王vs小山・村山・江夏、江川vs小林、江川vs掛布、クロマティvsバースといった、とても抜きん出た大スターによる個別のライバル対抗が、両チームのファンを興奮のるつぼに追い込んだ。これらの対決が両チームのファンのみならず、野球ファン全体の人気を大いに高めたのである。ところが現代ではスター選手はいるにはいるが、ここで列挙したような大スターは存在していない。昔と違って今では大スター、例えばイチロー、松井秀喜、田中将大、大谷翔平のようにアメリカ大リーグに行ってしまうことが大スター不在の一要因である。